加テレストリアル社、溶融塩炉・商業用初号機の立地FSをカナダで開始

2017年6月23日

 カナダで小型の一体型溶融塩炉(IMSR)を独自に開発するテレストリアル・エナジー社は6月19日、商業用初号機の建設地点をカナダ原子力研究所(CNL)所有のサイト内で特定するため、CNLがフィージビリティ・スタディ(FS)を開始したと発表した。2020年代のIMSR建設を目標に、オンタリオ州にあるCNLのチョークリバー研究所など、建設に適した地点の特定プロセスを共同で実施する。カナダ原子力公社(AECL)の研究所機能を引き継いで設立されたCNLは、小型モジュール炉(SMR)の商業化支援で技術ハブをCNLサイトに創設することを主要なビジョンの1つに掲げており、自らをSMR開発と将来的な建設の主要パートナーに位置付ける狙いがある。これと並行して6月1日には、SMRに対する関心表明書の提出要請(RFEOI)を産業界全体の関係者に発出。7月末までに得られた情報を元に、SMR技術の開発企業やサプライ・チェーン、潜在的なエンド・ユーザーおよび受け入れ自治体等の意見を反映したロードマップを作成するとしている。

 溶融塩炉は燃料として、溶融塩にトリウムなどを混合した液体を使用。テレストリアル社のIMSRは、出力2.9万kW~29万kWまで3種類のSMRになる予定で、安全かつ信頼性のある発電ソリューションになるとともに、600度Cのプロセス熱も供給可能だという。同社とCNLの今回の協力は2016年に締結した了解覚書(MOU)に基づいており、同覚書に設定された事業枠組の下、テレストリアル社とCNLはIMSRのエンジニアリング・プログラムを支援する試験や確証活動などで共同作業を行う。CNLからは様々な原子力サービスが提供される計画で、具体的には原子炉物理や熱水力学、冶金学、化学、廃棄物管理および廃止措置関連のものが含まれる。覚書の内容が非独占的であるため、CNLはその他の原子炉システムを所有サイトで建設可能であるし、テレストリアル社もCNL以外の地点でIMSRを建設することができる。

 テレストリアル社の米国法人は2016年1月、最初の商業用実証炉をカナダで建設した後、北米その他の市場で幅広くIMSRを売り込む展望を表明しており、同設計がカナダの技術的規制要件をどの程度、遵守できているか確認する認可前設計審査を同年2月にカナダ原子力安全委員会に申請した。同年9月になると、先進的な原子力プロジェクトを対象とする米国政府の融資保証プログラムに申請するよう、米エネルギー省(DOE)から招聘されたと発表。2020年代に米国市場でIMSRを販売することを目指して、米国の許認可手続を開始する意向を今年1月に米原子力規制委員会(NRC)に伝えた。米国初の商業炉建設サイトについては、DOEのアイダホ国立研究所やミシシッピー川東部の地点を含め、すでに4箇所で検討中であると明言。2019年後半に設計認証(DC)審査をNRCに申請するとしている。