仏アシステム社:世界中の原子力発電所建設計画への参加を見込みロシア企業と覚書
フランスを拠点とする国際的な原子力エンジニアリング・研究開発サービス企業のアシステム社は6月23日、ロシア国営原子力総合企業ロスアトム社のエンジニアリング部門であるASEグループと世界の原子力市場で協力する覚書を締結したと発表した。主な目的は、関連の情報管理システムにアクセス可能かつ、既存ソフトを円滑に統合できる特殊ポータルとしてASEグループが開発した「マルチD技術」に基づくエンジニアリング・ソリューションを、欧州や中東および北米などの原子力発電事業者に共同でプロモーションしていくこと。世界が低炭素社会に向けて移行するなか、アシステム社は原子力エンジニアリングに対するニーズが急速に高まっていると認識しており、5月には、フランス電力(EDF)への売却が決まっているアレバ社の原子炉機器・燃料サービス部門「アレバNP社」の新法人に5%出資することを提案した。ASEグループとの協力では、相乗効果によりマルチD技術を世界中で広く適用していくのに加え、ロシア国外でASEグループが手がける新しい原子力発電所設計・建設・試運転プロジェクトに積極的に参加する考えだ。
アシステム社がASEグループと協力覚書を締結するのは、今回が3件目。同社としては、世界でも有数のロシア原子力産業と協働することに大きな関心を寄せており、互いが有する専門的知見や個々の技術、および海外拠点は双方の顧客にとって非常に有益なものになるほか、原子力を一層安全かつ競争力のある技術にする一助となることを確信すると述べた。今回の覚書を通じて両社は、ロシア企業や外国企業が原子力発電所と火力発電所に提供する機器やサービスについて、エンジニアリングやサプライ・チェーン管理などの分野で協力。最終的には、研究炉と原子力発電所の廃止措置分野で両社のグループ企業が連携していく方針を明らかにした。
両社の覚書は、ロスアトム社が2009年から毎年ロシアで3日間、主催している世界最大級の原子力国際フォーラム「アトムエキスポ」に合わせて調印された。今年のアトムエキスポでは、過去最高の6,500人が65か国における650以上の企業・団体を代表して参加したほか、正式な政府代表団も33か国から参加。同フォーラムを利用して、ロシア政府がエチオピアやスーダンなど9つの国と政府間協定を締結したほか、各国の参加企業間でも様々な事業契約や覚書が結ばれた。会議の主要議題として、将来的な無炭素エネルギー源の中で原子力が占める立場に関する議論が行われ、各国が安全かつ安定したエネルギー・ミックスを構築するには、異なるクリーン発電技術を組み合わせる必要があるとされた。また、本会議や複数のパネル討論では、多くの講演者達が世界中のエネルギー・ミックスに占める原子力の割合は拡大するとの見解で一致。原子力発電所は信頼性のあるベースロード電源になるなど、無炭素エネルギー源の本質部分を形成する可能性は十分あると指摘した。