独政府と電力会社、脱原子力政策にともなう放射性廃棄物管理基金の払い込み契約締結
ドイツの連邦経済エネルギー省(BMWi)は6月26日、政府の脱原子力政策にともなう放射性廃棄物の管理費等を確保するため、原子力発電事業者に公的基金への払い込みを義務付ける契約をこれらの事業者と締結したと発表した。2022年までにすべての原子力発電所を閉鎖した際に発生する廃止措置経費のほか、廃棄物最終処分場のサイト選定や建設・操業等に必要な174億ユーロ(約2兆1,750億円)、および追加発生経費を賄う「リスク保険料」として35%を加算した約240億ユーロ(約3兆円)が必要と政府は試算。これらのための引当金を原子力発電事業者が公的基金に払い込んだ後は、それ以上の財政リスクはすべて政府が負担し、事業者が超過経費を求められることはないとする法案が昨年12月に成立、6月16日付けで発効したのにともなう措置となる。同法に対する欧州委員会(EC)の承認も得られたことから、E.ON社、EnBW社、RWE社、ドイツの原子力発電所を一部所有するスウェーデンのバッテンフォール社、およびミュンヘンの地域電力会社は、7月1日までに政府が創設した「放射性廃棄物管理基金」に約240億ユーロの払い込みを行うことになった。
脱原子力経費の資金調達方法は、緑の党のJ.トリッティン元党首など独立の立場の専門家で構成される委員会(KFK)が審議した上で2016年4月に勧告した。それによると、放射性廃棄物の中間貯蔵とキャニスターの製造、最終処分場の建設と操業、および中間貯蔵施設から最終処分場までの廃棄物輸送などの実施責任はすべて政府に移管される。一方、その財政的責任は廃棄物の発生者である事業者が負うほか、中間貯蔵にともなう廃棄物のパッケージングや原子力発電所の建屋と機器の解体、サイトの復旧についても、技術的な実施責任と財政的責任を事業者に留め置くとしていた。
このような勧告内容を実行に移すために策定された「原子力バックエンドに関する責任分担の刷新法」について、ECはドイツ政府の公的基金がEU域内の競争法であるEU機能条約(TFEU)の国家補助規則に適合するかという点で審査を行った。最終的に、公的基金に対する一定額の払い込みと引き替えに放射性廃棄物管理の実施責任を引き継ぐという政府決定には国家補助が含まれるとの結論を明示。理由として、廃棄物管理にともなう総コストは非常に不確定的であり、約240億ユーロという見積価格だけではドイツがコスト超過の可能性を完全に排除することはできないとした。最も重要な点としては、ドイツが未だに最終処分場のサイトを決定しておらず、この種の施設でコスト比較が可能なベンチマークが存在しない点を指摘。しかし、ドイツの今回の国家補助は、放射性廃棄物管理に必要な基金を政府が保証し、原子力発電事業者の財政状況が悪化した場合でも必要な基金を確保することが目的である。このためECとしては、政府による補助が目標達成の必要額を超えることはなく、EU単一市場の競争原理が歪められたとしても限定的になるとの判断を下したもの。