米エネ省長官が明言、「トランプ政権は原子力分野で世界的リーダーへの復帰を目指す」
米国が「エネルギー週間」に入ったのにともない、エネルギー省(DOE)のR.ペリー長官は6月27日にホワイトハウスでプレス・ブリーフィングを開催した。D.トランプ大統領とその政権がクリーン・エネルギー社会への移行を目指すことを改めて確認するとともに、原子力抜きではその目標を達成し得ないと考えていることを明確に表明。小型モジュール炉(SMR)などの技術開発を通じて、米国が原子力分野で世界のリーダー的立場に復帰することは非常に重要との認識を示したほか、DOEで進めたい職務の1つとして原子力を再び魅力的な技術とし、規制緩和を通じて原子力産業界を再び活性化するなどの抱負を明らかにした。トランプ大統領もその前日、ホワイトハウスでインドのN.モディ首相と会談し、共同宣言のなかで米印両国が自由で公平な貿易やエネルギー分野で連携強化することを約束。民生用原子力の協力についても、インドのアンドラ・プラデシュ州コバダで米国籍のウェスチングハウス(WH)社製AP1000を6基建設する計画の実現に向け、両国がコミットしていくと明記しており、WH社とインド原子力発電公社(NPCIL)との間で、早期に契約協定が結ばれることを期待するとの見解を表明している。
ペリー長官はまず、トランプ大統領の目標とするところは、国内の豊富な資源を利用して米国が永久に国内外でエネルギー供給面の自立を果たすことだと説明。エネルギーを経済兵器に利用する国々が引き起こす地政学的騒乱とは無縁の自立した国家となり、世界中の市場にエネルギーを輸出して世界のリーダー的立場と影響力を拡大する方針であるとした。また、クリーン・エネルギー社会への移行意志を再確認するにあたり、経済性の追求と環境保全は二者択一であると長年にわたって言われてきたのはオバマ政権による誤りであり、実際は両方をともに利することができると明言。パリ協定からの離脱報道で1つ抜け落ちている事実があるとすれば、それは米国が温室効果ガスの排出抑制ですでに世界を主導している点だと述べた。米国はパリ協定に調印するのではなく、技術革新を通じてこれを成し遂げており、同協定は納税者に高額なコストを強いるだけだとの認識を示した。
同長官はまた、クリーン・エネルギーを推奨する代わりにトランプ政権は行動を起こすと強調した。原子力発電抜きでは、クリーン・エネルギーの利用リストを真に完成させることはできないと長官自身が確信しており、トランプ大統領もまた同様であると指摘。もしも、我々が生活する環境や気候に良い影響を与えたいのであれば無炭素エネルギー源のリストに原子力を含めなくてはならず、これを安全に思慮深く、かつ経済的に行えば、米国のリーダーシップの下で世界中がその恩恵を被ることができると訴えた。同長官によると、トランプ政権は世界全体のクリーン・エネルギー利用リストを策定するにあたり、原子力開発が重要な役割を果たすとともに、新たな可能性を切り開くゲーム・チェンジャーにもなり得ると信じている。具体的には、先進的原子炉設計やSMRなどの技術開発に重点的に取り組むことで、それが可能になるとの確信を明らかにした。
この後、記者の1人は原子力発電開発の促進で具体的に何をするつもりか長官に質問。特に、ジョージア州とサウスカロライナ州で行き詰まっている原子力発電所建設計画について、米国で30年ぶりということで生じた技術的な欠落にどのように対処する考えかを聞いた。これに対して長官は、供給チェーンが基本的に衰退気味であることを認めた上で、利用可能なものすべてを活用するアプローチにより、極度に多様化したエネルギー・リストの中で原子力に重要な役割を果たさせることができると明言。産業界に対する過度の規制も取り組むべき課題の1つだとした。そして、中国やロシアが自分達の技術を普及させるために世界中で非常に積極的に活動しているなか、米国にとって重要なことは世界の原子力分野でリーダー的役割を保持、あるいは取り戻すことだと言明。これは、単に南部で原子炉を2~3基建設することよりも、WH社を安定した米国企業に留めることよりももっと大きな問題であり、米国とその同盟国の安全保障に関わる、とてつもなく重要な課題だと同長官は説明した。
この目的のためには、米国が原子力発電開発に関わり続けるプランを明確に保有するなど、様々なオプションを検討する必要がある。ペリー長官がDOEで行いたいことの1つは、原子力を再び魅力的なものにすることで、自らが若かった1960年代には多くの子供達が原子力分野に憧れを抱き、自分の出身校でも多くの若者が原子力エンジニアになることを希望していたという事実に触れた。現在はそうした状況とは変化しており、多くの場合は産業界に対する政府の規制上の締め付けが原因だと述べた。しかし、原子力が電源ミックスの一部として、環境と安全保障の両面から米国に恩恵をもたらせるようにすることは、国として必要と考えている点を長官は強調した。