英ヒンクリーポイントC計画、コスト再評価で総工費が15億ポンド増加
フランス電力(EDF)は7月3日、子会社のEDFエナジー社が英国南西部サマセット州で進めているヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所建設計画についてコストや日程の再評価を行った結果、総工費が当初試算より15億ポンド(約2,200億円)増の196億ポンド(約2兆8,700億円)になったことを明らかにした。建設スケジュールについては、タイトな日程のなかで2018年末までに最終設計を完了できたと仮定して、2019年半ばに1号機の安全性関連構造物で最初のコンクリート打設を行うことを確認。2025年末に同炉を完成させるという当初計画を堅持するため、社内能力を結集するとの見解を表明している。英国で約20年ぶりの新設計画となるHPC計画では、EDFエナジー社が160万kW級の仏アレバ社製欧州加圧水型炉(EPR)を2基建設する予定。総工費の約34%の出資を中国広核集団有限公司(CGN)が約束したことから、EDFは2016年7月末に同計画への最終投資判断を決定した。この時期に発足したT.メイ政権も同計画の実施を9月中旬に条件付きで承認しており、同月末に英政府はEDFおよびCGNと最終的な契約・合意文書に調印。英原子力規制庁(ONR)も今年3月、同計画の安全性関連構造物へのコンクリート打設について、最初の同意許可を発給した。
計画全体の再評価は、EDFがプロジェクト企業として設立したNNBジェネレーション社(NNB GenCO)の経営規則に則り、両社が共同実施したもので、総工費が増加した理由としては、サプライヤーとの協力で策定した「運営アクション計画」を挙げた。同計画は、ONRの要件に適合する原子炉設計や建設サイトにおける作業量と段取り、および供給契約の段階的な締結などについて十分な理解を得るのが主な目的。追加経費が発生したことで、EDFの利益率は当初予想していた約9%が約8.5%に低下したと述べた。また、完成日程に遅れが生じるリスクについては、1号機の場合は15か月、2号機については9か月と試算。このリスクによって、7億ポンド(約1,000億円)が追加で必要になる可能性があり、その場合の利益率は約8.2%に縮小するとした。NNB社は今後、このような再評価結果について検討するとともに、指摘された事項を実施に移す予定。2025年末の1号機完成という目標の達成や、指摘されたリスクと経費を削減するアクション計画の確認と実施に傾注していくことになる。
同計画を支援するため、英国政府は2013年10月、HPC発電所からの発電電力を買い取る固定(行使)価格を92.5ポンド(約13,500円)/MWh(サイズウェルC計画が確定した場合は89.5ポンド/MWh)とした上で、35年にわたって差金決済する制度(CfD)についてEDFグループと合意。ここでは、市場の卸売価格が行使価格を下回った場合に政府がEDFに差額を支払う一方、逆の場合はEDFが差額を支払うことになっている。欧州委員会(EC)は2014年10月、このような英国政府の支援策を承認したほか、その1年後には、HPCを含む英国の新設原子炉からの放射性廃棄物を地層処分する際の価格設定方法についても承認する判断を下している。