英国の原子力フォーラム、2021年に10万人以上の原子力技能者が必要と予測
英国・原子力部門の技能者フォーラムである「原子力技能者戦略グループ(NSSG)」は7月4日、同部門全体で原子力技能者の年間需要数と供給数を2021年まで継続的に予測していく「原子力労働力評価(NWA)」を開始したと発表した。20数年ぶりの新設計画として英国政府が進めている1,600万kW分の原子力発電設備建設プログラムを唯一のシナリオとし、現行の原子力潜水艦プログラムを加えた上で、2021年のピーク時に必要とされる技能者数は10万人以上に達すると予測。既存の労働力が高齢化していることもあり、原子力発電所の新設や運転のみならず、廃止措置、および軍事活動において必要となる優秀な原子力技能者の人材基盤を維持・育成するとともに、意欲的な建設プログラム推進で新たに人材供給するルートの開発が必要だとした。また、技能者の必要数と必要とされる時期を確たるデータに基づいて理解することは、そうしたルートの設計・開発において根本的に重要だとしており、こうした必要性を満たすために、NSSGはメンバーであるEDFエナジー社やNuGen社、ホライズン社などの原子力発電事業者、原子力規制庁(ONR)、政府の関係省などからデータの提供や後援を受けて2017年版のNWAを作成。これに基づく技能者の供給計画により、必要とされる技能者が適切な場所で適切な時期に、適切な数、確保されるよう保証していきたいとしている。
2017年版のNWAにおける判明事項を、NSSGは次のように説明した。まず、2017年の労働力プログラムで必要とされる総数を87,560人とした上で、この数が2021年時点で10万619人に増加すると指摘。民生用原子力発電所の新設スケジュールが2015年以降変わっていないため、需要数がピークを迎える時期も2021年のまま変更ないと説明した。既存設備で必要な人数が今後10年間に約5分の1まで直線的に下降する一方、リプレース設備のための需要人数は同じ期間で年平均1,450人であるため、産業界全体として2021年までに新たに補充・増員が予想される正規雇用者数は年平均6,830人になるとしている。
また、現在の労働力を技能レベルで分析した結果、原子力技能者は(1)取得に長期を要する高レベルの特殊技能を持った専門家、(2)安全性保証文書(セーフティ・ケース)の作成など原子力産業においてのみ必要とされる原子力技能の保持者、(3)原子力以外の産業でも見受けられる一般的技能の保持者--に大別され、それぞれの比率が1%、18%、81%というピラミッド構造になっている点を指摘。8割以上がほかの産業でも使える技能を身につけているものの、将来的に労働力の供給面で不安転換点を迎える分野として、セーフティ・ケース作成、計測制御、原子炉運転、サイト点検、プロジェクトの立案・管理、起動エンジニアリング、電気エンジニアリング、緊急時計画立案、品質保証、などを挙げた。このほか、2016年10月時点で原子力技能者全体のうち22%が女性だったが、産業界の中での役割毎に14%~36%までバラツキがあったことを明らかにした。