気候変動の世界的科学者27名が韓国の文大統領に脱原子力再考を勧告
脱原子力政策への転換を宣言した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、環境保護活動家や地球温暖化の世界的権威など27名の科学者が7月5日、連名で再考を促す書簡を公開したことが明らかになった。韓国の大学教授や学者240名が同様の要請を行ったことから、米国の著名な環境保護活動家のM.シェレンバーガー氏が自ら創設したクリーン・エネルギー研究・政策分析組織「エンバイロメンタル・プログレス(EP)」を通じて作成を主導したもの。温暖化問題の世界的な専門家であるJ.ハンセン氏やカリフォルニア大バークレー校のR.ムラー教授、国際エネルギー機関(IEA)の田中伸男・元事務局長などが名を連ねている。6月18日に韓国で初めて永久閉鎖された古里原子力発電所1号機の式典で、文大統領は既存炉の運転期間延長禁止と計画中のものの全面白紙化によって原子力発電設備を徐々に削減していくと宣言した。27名は書簡の中で、脱原子力政策が引き起こす、温暖化防止対策面やエネルギー供給保証面、および経済面のデメリットを例示。最終的な判断を下してしまう前に、エネルギー・環境問題など、幅広い分野の科学者や専門家と慎重に協議するよう大統領に強く訴えている。
同書簡で科学者らはまず、十分に検査され、コスト効果の高い原子力発電所の供給能力の面で韓国は過去20年にわたって世界的に評価されており、建設コストを徐々に削減することができた唯一の国だと指摘。アラブ首長国連邦(UAE)初の原子力発電所建設計画を韓国電力公社(KEPCO)の企業連合が受注したことは、国内外で費用効率の高い発電所が建設可能であることを実証したと述べた。次に、CO2排出量を大幅削減し、大気質を改善するには、原子力発電設備の拡大が必要との認識で世界中の温暖化対策の専門家が強く一致している点に言及。仏アレバ社とウェスチングハウス社が経営危機に陥ったことを考えると、韓国原子力産業界の存在は非常に重要であり、仮に原子力から撤退した場合、世界の原子力発電所新設で競合できる国はロシアと中国だけになってしまう。脱原子力政策によって、海外の新設受注競争でKEPCOが続けている努力は根本的に台無しになるし、買い手となる国も当然のことながら、脱原子力を進めている国からの発電所購入に疑問を抱くはず。このような受注競争に必要となる原子力産業の労働力とサプライ・チェーンも、衰退していくことになるとの見通しを示した。
科学者らはまた、電力供給において太陽光と風力が原子力の代替電源になり得ないと断言している。2016年に韓国における太陽光と風力の発電シェアはそれぞれ1%と0.35%であり、すべての原子力発電所を太陽光で代替する場合、ソウル市の5倍以上の敷地面積が必要。風力に至っては14.5倍になると試算した。国土が限られた韓国における、これら電源の間欠的な発電は、化石燃料発電所の継続的な運転を必要とするため、石炭とLNGの所要量は大幅に増加。これでは、パリ協定の誓約目標を韓国が達成することはできなくなるとしている。原子力をLNGで置き換えた場合、発電所新設の初期投資として230億ドル、毎年の輸入で100億ドルが必要であり、このような高額の経費はむしろ、韓国の原子力発電所を一層安全かつ廉価にするための技術革新に使うべきだと科学者らは勧告。具体例として、事故耐性燃料や新型原子炉設計の開発と実証を挙げた。
締め括りとして科学者らは、この地球には活気に溢れた韓国原子力産業界が必要であり、産業界にとっては大統領が強力な支持者や擁護者であってくれることが必要だと指摘。韓国が原子力から撤退するとなれば、世界は人類が貧困や地球温暖化の脅威から脱するのに必要なエネルギーを、安価かつ豊富に供給できる貴重な電源を失うことになる。大統領がこのような見解を検討し、回答を示してくれることを期待すると結んでいる。