仏安全研究所、深地層処分場建設計画の安全性を肯定的に評価

2017年7月11日

 フランス原子力安全規制当局(ASN)の技術的支援機関である放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は7月4日、高レベル放射性廃棄物(HLW)などの廃棄物を深地層で長期管理する施設「CIGEO」の「安全オプション意見請求文書(DOS)」を技術面から評価した結果、DOS段階のプロジェクトとしては全体的に十分成熟したレベルに達していると結論づけた報告書を公表した。DOSは施設の設置許可(DAC)申請に先だち、主要な原則やアプローチなど、基本的な安全性の考え方を公開討論で説明するために作成される文書。廃棄物処分の実施主体である放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2016年4月にASNに提出していたもので、ASNの要請を受けたIRSNは、原子力安全と放射線防護の両面から適切であるかを審査していた。ただし、実際の設計で変更が必要になる可能性のある課題を4点、IRSNは指摘。2018年末までのDAC申請を目標に、ANDRAがCIGEOの安全性を実証する上で対処すべき事項を明確に示している。

 CIGEOでは、1万立方mのHLWと7万立方mの長寿命・中レベル放射性廃棄物を地下500mの深地層で少なくとも100年間、回収可能な状態で貯蔵する計画。フランス東部のムーズ県とオートマルヌ県にまたがるビュール地区を含めた、30平方kmの圏内で建設することが2010年に決定しており、ANDRAは2020年代後半の操業試験実施と2030年代の事業許可取得を目指している。建設と操業にかかる基準コストは、2016年1月にエコロジー・持続可能開発・エネルギー省が250億ユーロ(約3兆2,555億円)に改定。これは、廃棄物を発生させるフランス電力(EDF)とアレバ社および、原子力・代替エネルギー庁(CEA)が負担することになっている。

 DOS評価はCIGEO設計を確定し、安全要件を統合するための最終段階であり、IRSNはその判明事項を今年5月、ASNの諮問機関である「廃棄物担当専門家常設グループ(GPD)」と「原子力関連工場および研究所担当専門家常設グループ(GPU)」に提示。設計変更につながるかもしれない4点の課題としては、IRSNは以下の点を指摘している。すなわち、(1)貯蔵インフラと縦坑が核物質を環境中に移行させる経路とならないように、施設の構成を最適化する、(2)操業期間中のリスクについてモニタリング措置を取る、(3)インフラ汚染を引き起こす可能性のある状況を管理するため、介入手段を確保する、(4)ビチューメン(アスファルト)を混合した貯蔵パッケージが、処分坑道で火災を発生させた場合の対策を取る--である。

 4番目の課題は特に、設計コンセプトへの影響が最も大きく、発生すれば十分な安全性を保証できないとIRSNは強調。CIGEOにおける貯蔵パッケージ総数の約18%(4万パッケージ)がビチューメンを含んでいるので、火災で温度が上昇した際に、熱波を拡散させる恐れがあるとした。このため、ANDRAに対しては廃棄物の発生者との協力により、ビチューメン混合物の熱反応を抑える前処理方法を検討するか、処分坑道内で火災拡大の可能性を除去するために、処分概念を大幅に見直すべきだと勧告。これらへの対処作業がDAC申請書の概要に影響したり、関連作業に遅れが生じる可能性も指摘している。