米国:SMRなどの開発促進で先進的原子力製造センター開設

2017年7月21日

 大型軽水炉に代わる将来的な次世代原子炉の選択肢として、複数の小型モジュール炉(SMR)や新型原子炉(AR)概念が浮上しているのに合わせ、米国ではこれらの効率的な製造にともなう技術的課題に取り組もうとする動きが出ている。「米国原子力インフラ評議会(NIC)」では原子力エネルギーの推進と米国サプライ・チェーンの海外展開を促進しているが、その提唱を受けて、非営利で中立な立場の応用科学・研究開発サービス提供組織であるコンカレント・テクノロジー社(CTC)がこのほど、「先進的原子力製造センター(CANM)」を正式に運営することになった。2030年代後半までに数百ものSMRやARシステムが必要になるとの予想があるにも拘わらず、この分野では実証済みの応用技術や先進的な製造技術が不足するという深刻な問題がある。このためCTC社は、CANMを通じてこのような初期段階特有の課題を解決するとともに、製造分析や新しいプロトタイプ機器の設計などを実施。CTC社が開発したスキルや製造プロセスを、米国のSMR/AR製造産業に役立てていくことになる。手始めとしてNICとCTC社は、8月下旬にペンシルベニア州の2か所で原子力サプライヤー・ワークショップとCANM紹介用のオープンハウスを開催予定。原子力施設や新たな原子力建設プロジェクトに関心を持つ製造企業が、米国の先進的製造ネットワークに加わるよう促すとともに、同ネットワークの増強を図る考えだ。

 CTC社の発表によると、現在の軽水炉システムと比較して、SMRやARでは根本的に異なる製造アプローチが必要。理由として、これらが比較的コンパクトで出力も最大60万kWであること、工場内で製造可能であり、目的地で組立てるために部品で輸送できる点を挙げた。加えて、受動的安全技術も採用されていることから、その製造アプローチは原子力サプライヤーと規制当局双方にとって大きな挑戦。SMRとARを需要に応じて効率的に製造するには、サプライ・チェーンの能力増強から機械化された自動製造プロセスの開発まで、数え切れないほど多くの技術的課題に取り組まねばならないとした。こうした背景から、NICの製造&サプライ・チェーン作業グループとNIC加盟企業はCANMという概念を案出。同センターの運営能力を有する最良オプションを広範に審査した結果、NICの総意によりCTC社が選択されたと説明した。CTC社は大規模インフラや天井の高い巨大なクリーン・ルーム、機器、試験施設などに対する先進的なエンジニアリング・製造サービスの提供で30年の実績を保有。また、製造関係のサイバー・セキュリティや鋳造、3Dプリンターに代表される追加製造技術など、重要な技術分野毎に経験値の高い専門家を擁している点も、CTC社選択の理由としてNICは指摘している。