GEH社、ARC社製・Na冷却小型高速炉「ARC-100」の商業化に協力
米国のGE日立ニュークリア・エナジー(GEH)社は8月28日、メリーランド州の有限責任会社「アドバンスド・リアクター・コンセプツLLC(ARCニュークリア社)」が開発しているナトリウム冷却式小型高速炉「ARC-100」について、許認可取得と建設に協力することになったと発表した。3月にARC社と結んだ先進的小型モジュール炉(SMR)の商業化に関する協力合意を発展させたもので、今回の開発協定に基づきGEH社は、独自開発したナトリウム冷却高速炉「PRISM」の知的財産権の使用をARC社に許すなどして、ARC-100設計の商業化を支援する。初号機はカナダで建設する計画で、両社の共同チームは現在ARC-100の設計作業を進めつつ、カナダ原子力安全委員会による許認可手続前の予備的設計評価サービス「ベンダー設計審査」を受けるための準備作業中。ベンダー設計審査が完了した段階で両社は連携関係の再評価を行い、同設計をカナダ以外の国で展開していくかという点について検討することになる。
ARC社によると、「ARC-100」は電気出力10万kW、熱出力26万kWで、工場で製造した後は直径6mの地下サイロに据え付けることができる(=概念図)。ウラン金属合金を燃料棒に使用しており、燃料交換サイクルは20年間という長さになるという。米エネルギー省(DOE)のアルゴンヌ国立研究所で約30年間運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の主要メンバーが、ARC社の熟練エンジニアとして実証済みの技術を提供。既存の軽水炉より優れている点としては、機器の製造コストが低いことや工期も18~24か月と短いこと、受動的安全系により炉心溶融や電源喪失といった事態が発生しないことなどを挙げている。GEH社もARC社と同様、EBR-IIに由来するナトリウム冷却高速炉技術に投資を行い、知的財産権を保有するとともに広範な経験を蓄積してきた。GEH社は今回の開発協定により、安全文化や品質保証、運転員訓練、諸手続き、ツールなどに関する同社の原子力インフラ・プログラムをARC社が利用できるよう計らうほか、設計エンジニアリングの専門的知見を提供することになる。GEH社のJ.ボール原子力プラント・プロジェクト担当副社長も、「互いに補い合える協力関係を通じて、ナトリウム冷却高速炉技術の商業化がどの程度加速していくかが楽しみだ」との抱負を述べた。
なお、GEH社は今年6月、「PRISM」の将来的な商業化に向けた許認可の取得で協力するため、米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社を含む米国企業5社とチーム結成協定を締結した。柔軟性のある効率的な発電に重点を置いた「ARC-100」とは異なり、「PRISM」は主にプルトニウムなどの超ウラン元素を燃焼消費することで核燃料サイクルの完成を目指す設計。英国では、国内に保管されている余剰プルトニウム112トンをリサイクルする場合の利用選択肢の1つとして、政府が同設計を選定している。