米サウス・テキサス・プロジェクト原子力発電所、ハリケーン上陸時もフル稼働
8月25日に米国南西部のテキサス州に上陸した大型ハリケーン「ハービー」は、州内で深刻な洪水被害をもたらすとともに複数の製油所を生産停止に追い込んだが、最大都市ヒューストンの南西90マイル(約145km)に位置するサウス・テキサス・プロジェクト(STP)原子力発電所(=写真)では、1、2号機(各PWR、141.8万kW)がハービー上陸前から一貫して、100%出力による運転を安全に続けていることが明らかになった。ハービーは26日に熱帯低気圧に変わったものの、29日になっても同州南東部で断続的な大雨をもたらしており、州内の200万世帯に電力供給しているSTP発電所では、特別編成の対応チームが引き続き気象条件をモニターし、24時間体制で安全かつ信頼性のある運転継続を心がけるとしている。同発電所の運転を担当するSTPNOC社の発表によると、同発電所では地元自治体や州政府および連邦政府と緊密に調整した包括的緊急時対応計画が敷かれており、これに加えて今回はハービー上陸前に極端な悪天候に対処する独自の計画とハリケーン対応の準備作業をすべて実行。原子力規制委員会(NRC)が定めたガイドラインと社内の内部手順に従って、暴風の風速が時速73マイル(約118km)を超えた場合は、両炉を安全に停止させることになっていた。ハービーのピーク時の最大風速が時速50マイル(約80km)という時点で、発電所における風速が約40マイル(約63km)であったため、最新の気象予測に基づき原子炉2基の停止は想定しなかったと説明した。
ハービー対策の一環として、STPNOC社は約175名のスタッフで構成される特別対応チームを発電所内に配置。運転員やエンジニアだけでなく、保守点検、緊急時対応、およびセキュリティ関係も含め、十分な教育訓練を受けた経験者のみを待機させたという。また、同発電所の格納容器は厚さ4フィート(約1.2m)の鉄筋コンクリート製であり、原子炉と主要機器および使用済燃料を格納する建屋も、鉄筋コンクリートの厚みが4~7フィート(約1.2~2m)あるため、大型ハリケーンのみならず竜巻にも耐え得る構造だと強調した。サイト自体も沿岸から10マイル(約16km)内陸部、平均潮位より29フィート(約8.8m)上部に位置しており、最も強力な「カテゴリー5」のハリケーンの高波に対しても十分な高さがあると指摘。さらに、緊急用電源や冷却システムが十分に機能できるよう、発電所の建屋やドアは防水設計になっているほか、安全関係の機器を格納する建屋のすべてが洪水対策として、平均潮位より少なくとも41フィート(約12.5m)上部に作られたとしている。