米サザン社、ボーグル3、4号機の建設続行・完成を州政府に提案

2017年9月1日

 米サザン社の最大子会社であるジョージア・パワー社は8月31日、ジョージア州で建設中のA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各PWR、110万kW)について、工事を継続して両機とも完成させるべきだとする勧告文を同州の公益事業委員会(PSC)に提出した。エンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を結んでいたウェスチングハウス(WH)社が倒産申請したのにともない、完成までのスケジュールやコストを、計画放棄した場合も含めて包括的に再評価した結果、同社を含む出資企業全4社が一致してこの結論を支持したもの。PSCはこの勧告文を審査した上で、プロジェクトの先行きを最終決定することになる。同じ時期に同じ設計を採用して着工したV.C.サマー2、3号機建設計画では、事業者のスキャナ社が7月末、両機とも完成を断念する方針を明らかにしたが、ボーグル計画では再評価期間中も建設工事が継続中。現在の予測では3号機が2021年11月、4号機が翌2022年11月に、米国で約30年ぶりの新設原子炉として営業運転を開始する見通しである。なお、ジョージア社は同日、WH社から引き継いだ現場のプロジェクト管理業務をベクテル社に発注したことを明らかにした。WH社もエンジニアリングや許認可手続等の支援で現場に留まるものの、サザン社の原子力発電子会社であるサザン・ニュークリア社の指示の下、ベクテル社が両機の完成に向けて日々の作業を管理していくとしている。

 建設続行を決めた理由としてジョージア社は、3、4号機が60年~80年にわたって稼働することにより数百万人の州民にクリーンで安全かつ信頼性のあるエネルギーを適正価格で継続的に供給できることと、低コストで無炭素なエネルギー源の1つとして同社の電源ミックス多様化に資する点を指摘した。すべてのファクターを考慮した場合、2基を完成させることは顧客にとって最も経済的なチョイスであるとともに、無炭素なベースロード電源としての利点を温存できると強調。具体的なファクターとして、経済面の信頼性解析、1基あるいは2基とも放棄した場合や、ガス火力発電所に転換した場合など様々な選択肢の評価を挙げたほか、潜在的なリスク想定として、連邦政府の融資保証制度と発電税控除(PTC)で追加支援が得られる可能性、東芝による親会社保証金の将来的な支払いなどを考慮したと述べた。プロジェクトに45.7%出資するジョージア社の場合、今年6月までに投入した資本コストは約43億ドル。このほか、完成までに必要と見積もられた追加コスト45億ドルを加算すると、総資本コストは約88億ドルになる。このうち約56億8,000万ドルはPSCが同社分として回収を承認済みであり、東芝から17億ドルが支払われるとした場合、ジョージア社が追加で支払う資本コストは約14億ドル。新しい評価結果に基づけば、プロジェクト全体の総資本コストは190億ドルになるとの予測を明らかにしている。

 米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は同日、ジョージア社ら出資企業による今回の決定を歓迎するとともに、これは米国の原子力発電における新たな時代の幕開けになると評価。また、現場の従業員や契約業者および原子力サプライ・チェーンに対するカンフル剤ともなり、3、4号機が稼働する60年間を通じて、ジョージア州と米国全体に雇用や経済活動の創出といった波及効果が持続するとの展望を述べた。ただし、この完成プランでは、エネルギー省(DOE)から現行の融資保証額である83億3,000万ドルに加えて追加の保証を得ることや、PTCの適用期間延長を議会が承認することなどが前提にされたと指摘。NEIとしては、ボーグル3、4号機を完成させる上で非常に重要なPTCが適用されるよう議会に働きかけており、すでに下院は6月に適用期限の撤廃を表決した。これらの2基は絶対に失うわけにはいかない国家資産であり、上院も下院に倣って出来るだけ迅速に、米国における戦略的インフラの重要ピースを温存しなければならないと訴えている。