パキスタンでチャシュマ4が正式完成、2030年までに原子力で880万kW追加へ

2017年9月11日

        ©パキスタン政府

 パキスタンのS.K.アバシ首相は9月8日、国内で5基目の商業炉となるチャシュマ原子力発電所4号機(PWR、34万kW)の落成式典で演説し、2030年までに政府は原子力で880万kWの設備追加という目標を達成すると約束した(=写真)。同国では現在、1970年代にカナダから導入したカラチ原子力発電所1号機(カナダ型加圧重水炉、13.7万kW)と、中国の協力により開発中のチャシュマ原子力発電所で1、2号機(各PWR、32.5万kW)が営業運転中。続く3号機(PWR、34万kW)も100時間の信頼性実証試験を終えて昨年12月に落成式が開催されたほか、2011年12月に着工した4号機は今年6月に初めて国内送電網に接続されていた。さらに、中国が輸出用の第3世代PWR設計と位置付ける「華龍一号」が、パキスタン最大の商業都市カラチから32kmの地点でカラチ2、3号機(K2、K3)(各110万kW)として建設中。慢性的な電力不足から脱却するため、2021年以降の完成を目指して工事が急ピッチで進められている。

 アバシ首相は演説のなかで、エネルギー危機の克服および輪番停電を終わらせることは、パキスタン政府の最優先事項であると述べ、稼働中の原子炉3基はクリーンで廉価な電力の供給という点で大いに役立っていると指摘した。諸外国の手を借りずにカラチ1号機を40年間、自力で運転を続けることができたことはパキスタンの誇りだとしたほか、K2とK3が早いペースで建設されていることにも満足の意を表明。この関連で、パキスタン原子力委員会が果たした様々な分野での貢献を称賛した。首相はまた、パキスタンの原子力発電所は信頼性が非常に高く、これらすべてが国際原子力機関(IAEA)の保障措置を全面的に履行していると強調。将来的な建設プロジェクトにおいても、同様の指針に沿って建設されることになると保証した。

 同首相はさらに、1,000万kW以上のエネルギー開発プロジェクトは輪番停電問題を克服する一助になったとし、政府としては今年11月までに終わらせると明言。特に、パキスタンと中国が2000年代から共同で進めている「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)プロジェクト」によって、国内交通網が広範囲に整備されるだけでなく、タール石炭火力発電所の開発や、同経済回廊のパキスタン側出口であるグワダル港の発展が実現すると強調した。CPECプロジェクトは、中国西端の内陸部に位置する新疆ウイグル自治区のカシュガルから、パキスタン全土を縦断してアラビア海沿岸のグワダル港までを結ぶ経済構想。パキスタンにおける電力エネルギー・インフラ開発への資本投下を中心としたもので、同国のエネルギー不足を解消する一方、中国側も太平洋岸の商業都市から海路でマラッカ海峡等を経由することなく中東地域に到達できるため、石油資源の容易な確保が可能になると言われている。