米国:ハリケーン「イルマ」上陸時も1基を除いて原子力発電所はフル稼働

2017年9月12日

 9月10日に米フロリダ州に上陸したカテゴリー4の大型ハリケーン「イルマ」により、同州では650万世帯が停電するなどの被害が発生したが、米原子力規制委員会(NRC)は翌11日、「イルマ」の進路上で運転停止した原子力発電所は、最終的にターキーポイント3号機(76万kW、PWR)のみに留まったことを明らかにした。マイアミ南部の同発電所では25年前にもカテゴリー5のハリケーン「アンドリュー」が通過しており、重要な安全関連機器は維持できたものの構造物の一部が損傷するなどの被害を受けた。このため、事業者のフロリダ・パワー&ライト(FPL)社は今回、進路に当たった州内のターキーポイントおよびセント・ルーシーの両原子力発電所で前もって緻密な準備作業を実行。NRCも8日の時点で、両原子力発電所に2人ずつ追加の検査官を派遣するとともに、ジョージア州アトランタの地域事務所で、9日にも緊急対応センターを起動する準備を行っていた。このようにNRCは、過去数十年間に原子力発電所に影響を及ぼした自然現象から膨大な経験が蓄積され、「イルマ」で予想された状況にも対応可能である点を強調している。

 米国ではハリケーンによる暴風が予想される場合、進路の近隣に立地する原子力発電所では事前に原子炉を停止し、機器の点検と確かな外部電源の確保が完了するまで再起動しないことを義務付けられている。FPL社では7日にハリケーン警報が発令されたのにともない、NRCの要件に従って緊急時尺度の最低ランクである「異常事態」を宣言。両発電所を慎重かつ段階的に停止させる準備を整えた。また、ディーゼル発電機燃料などの供給物資や機器類の点検、吹き飛ばされる恐れのある設備等の移動、交通が遮断された際の十分な人員確保といった暴風雨対策を終えた後、9日に予定通りターキーポイント3号機を停止した。NRCも緊急対応センターを起動して監視体制に入っていたが、その後「イルマ」の進路が変わり、暴風がハリケーン・レベルを下回るとの予想になったため、FPL社では4号機(76万kW、PWR)の運転をそのまま継続。セント・ルーシー発電所の2基(各80万kW級PWR)についても、「定格出力で運転を継続する」旨をNRCに伝えた。ただし、ターキーポイント4号機は10日の深夜になって、弁の不具合により自動停止。セント・ルーシー1号機も、外部電力供給用の開閉所で断熱材に塩分が蓄積したことから、FPL社は出力を徐々に下げて状況の改善に当たっている。

 このほか、NRCの緊急対応センターは11日の朝時点で、ジョージア州南部のE.I.ハッチ原子力発電所(90万kW級BWR×2基)とアラバマ州南部のJ.M.ファーリー原子力発電所(90万kW級PWR×2基)について、「イルマ」が影響する可能性を調査。その結果、どちらの発電所も原子炉が2基ずつフル出力で稼働中、かつ十分なハリケーン対策も完了していたが、影響が及ぶほどの暴風雨は予想されなかったことを明らかにしている。