豪州、第4世代原子力システム開発の国際フォーラムに正式参加

2017年9月21日

仏国のOECD本部で開催された記念式典で演説するパターソンCEO©ANSTO

 オーストラリア(豪州)で唯一の原子力関係国立研究所である豪州原子力科学技術機構(ANSTO)は9月15日、「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)」で具体的な研究開発協力を行う際の規定を定めた「枠組協定」に豪州政府が同意し、GIFの正式な加盟国になったと発表した。豪州は世界最大のウラン埋蔵量を保有する一方で商業用原子力発電所をもっておらず、低価格な石炭資源に恵まれていたことを背景に原子力発電開発は禁止されている。しかし、近年になって地球温暖化防止への取り組みや、新たな原子力技術開発への国際協力といった観点から、約20年前の古い法律が定めた禁止条項の撤廃を求める向きもあり、豪州政府は2016年6月にGIFの理念を定めた「GIF憲章」に署名。経済性や安全性、持続可能性、および核拡散抵抗性の面で優位な、画期的原子力システムの開発・設計を目指すという国際協力の枠組に参加することになった。前身が豪州原子力委員会というANSTOは現在、出力2万kWの多目的研究炉「OPAL」で医療用放射性同位体の生産や放射線照射サービスなどを行っているほか、出力3GeVの電子シンクロトロン、生物医学研究用サイクロトロンといった様々な研究施設も保有。GIFにおける豪州の窓口機関として、ANSTOが有する世界レベルの能力のなかでも特に、極限の産業環境で使われる先端材料の開発能力や原子力セーフティケース(安全性保証文書)の開発能力をGIFのプロジェクトに活用していきたいとしている。

 GIFは1999年に米国が提唱した研究開発協力の枠組で、6つの有望な原子力システム、すなわちガス冷却高速炉(GFR)、鉛冷却高速炉(LFR)、ナトリウム冷却高速炉(SFR)、溶融塩炉(MSR)、超臨界水冷却炉(SCWR)、超高温炉(VHTR)について、研究開発プロジェクトを実施している。米国のほかに日本やフランス、中国、ロシア、欧州原子力共同体(ユーラトム)などの13か国/国際機関が「GIF憲章」に署名しており、このうちアルゼンチンとブラジルおよび英国を除く10か国/国際機関が「枠組協定」にも調印もしくは同意。豪州はこれらに続いて14番目の「GIF憲章」署名国であり、「枠組協定」を受け入れて実際の研究開発活動を積極的に行うメンバーとしては11番目となる。

 ANSTOのA.パターソンCEOによると、GIFの加盟国は具体的に、「一層効率的な燃料の使用、放射性廃棄物の発生量削減、経済的競争力の向上、安全性と核拡散抵抗性で厳しい基準の遵守」を追求している。その上で、「原子力発電開発プログラムが無くても、豪州は次世代原子炉の研究に役立つ専門的知見を十分持っており、原子力の平和利用に重点的に取り組む国際グループに貢献できる」と述べた。また、豪州がGIFに参加出来たことは、ANSTOの専門的知見、および高度な原子力科学インフラが培ってきた豪州の素晴らしい研究能力と、科学・技術・工学・数学(STEM)の関連産業が国際的にも認められたことを意味すると指摘。原子力研究と技術に関する豪州の知見を共有し、原子力安全と核拡散抵抗性をさらに改善することが、国際的な場における豪州の役割だとする一方、豪州としてもGIFの長期的な研究プロジェクトを通じて、諸外国と情報共有するための新しい機会や方向性を模索したいとの抱負を表明した。