OECD/NEA、「国際協力活動の結節点」として福島第一廃炉を支援
OECD/NEAの放射性廃棄物関連の専門家グループは、このほど福島第一原子力発電所の廃炉に向けた日本の取組状況についてレポートを取りまとめた。その中で、事故から6年以上が経過した今、「長期的な課題に対する戦略立案に焦点を移しつつある」などとした上で、現在進行中のプロジェクトに加え、NEAが進めている中長期的な研究枠組み「原子力イノベーション2050」でも協力活動が行われる可能性を示唆した。
福島第一原子力発電所の廃炉に向けては、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が8月末に、近く見込まれる廃止措置中長期ロードマップ改定の技術的根拠「技術戦略プラン」を取りまとめたところだ。それによると、今後の大きな課題である1~3号機の燃料デブリ取り出しに関しては、「炉内状況が十分に把握できていない“不確かさ”」、「事故により溶融した燃料や損傷した施設という“不安定さ”」、「厳しい放射線環境によるアクセスが困難なところによる“不十分な管理”」というリスク管理上の困難を抱えているとしている。
NEAの専門家グループによるレポートでは、こうした福島第一原子力発電所の廃炉計画における課題に対しNEAが取り組んできた国際協力活動について述べている。
NEAの主要な委員会の一つである「放射性廃棄物管理委員会」(RWMC)に置かれた「廃止措置作業部会」(WPDD)では、「事故を起こしていない原子力施設の廃止措置に関して策定されてきた多くの戦略やアプローチは、福島第一原子力発電所の廃炉に向けても活用することが可能」としており、実際に、日本は、こうした専門的知識を福島第一廃炉の参考とすべくWPDDの活動を通じた情報共有に参画してきた。原子力施設が廃止措置へ移行する際、まず重要な作業となるのは、すべての使用済み燃料およびプラントに残存する燃料物質を取り出すことだが、福島第一原子力発電所の場合は、事故時に大量の損傷燃料が生成されており、様々なリスク要因をはらむことから、本レポートでは「炉内状況を理解し、モニターし、管理する方法を確立する」ことで、燃料デブリによるリスクを継続的かつ速やかに下げることが重要だと強調している。
これに関し、事故進展を解明し炉内状況を評価するというニーズへの対応として、NEAでは、「福島第一原子力発電所事故のベンチマーク研究」(BSAF)を2012年に開始しており、事故後最初の3日間の解析を行うフェーズ1の成果が2016年に取りまとめられたのに続き、事故後3週間と核分裂生成物挙動の解析を行うフェーズ2も間もなく終了するところだ。さらに、NEAによる取組は、安全研究に資するという重要性も認識しており、RWMCと同じくNEAの委員会の一つ「原子力施設安全委員会」(CSNI)では、「ポスト福島の安全研究機会に関するシニアレベル専門家グループ」(SAREF)を立ち上げ、廃炉戦略の支援とともに安全面の知識向上にも努めている。
また、日本からの要請に応え、NEAは2014年に、福島第一廃炉に伴い大量発生する複雑な性状の廃棄物に対し戦略的アプローチを図る「福島第一の廃棄物管理・廃炉研究開発に関する専門家グループ」(EGFWMD)を設置した。EGFWMDでは、日本の専門家の他、TMI事故やチェルノブイリ事故、環境修復や廃棄物処理に関する諸分野で経験を有する各国の専門家たちが議論を積み重ね、2016年に報告書を公表しており、その成果は原子力損害賠償・廃炉等支援機構の技術戦略にも反映されている。
こうしたNEAによる福島第一原子力発電所廃炉に向けた国際協力活動を振り返り、本レポートでは、「関係機関が協力を強化して、一連の研究開発プロジェクトを効率的かつ効果的に管理していくことが、成果を実際に現場に適用していく上で不可欠」と強調した上で、引き続きNEAは「国際協力活動の結節点」として、その役割を果たしていくべきと述べている。さらに、現在、NEAで、プログラムの選定・提案が検討されている中長期的取組「原子力イノベーション2050」に、福島第一原子力発電所事故の教訓に着目した協力活動が盛り込まれることにも期待を寄せている。
OECD/NEAのレポートについては、こちら 英文(P.8~12) 仮訳をご覧下さい。