英国の大手労組、政府にムーアサイド計画への介入を改めて要請
英国内のエネルギー関係も含めた組合員が約64万人という「全国都市一般労働組合(GMB)」は9月21日、東芝の100%子会社であるニュージェネレーション(NuGen)社が進めるムーアサイド原子力発電所建設計画の資金調達問題について、英国政府が積極的に介入すべきだとする見解を改めて表明した。同計画では、西カンブリア地方のセラフィールド近郊でウェスチングハウス(WH)社製AP1000を360万kW分建設予定だったが、WH社の経営破綻にともない親会社の東芝が大規模な債務超過に陥ったことから、40%出資予定だった仏国のENGIE社も今年4月に同計画から撤退した。その代わりとして、中国広核集団有限公司(CGN)が出資を検討中との報道についてGMBは、「2025年以降に英国で電力需要の7%を供給するという発電所建設計画の解決策になり得ない」と断言。「資金調達を巡って混迷状態が続くのを多くの英国民が見守っており、一体なぜ政府が介入しないのか問いかけている」と指摘した。GMBは今年2月にも、同計画に政府が介入するよう要請する声明文を発表しており、国内の重要インフラ建設で外国資本に依存することは、常にリスクをともなうと説明。政府が不足資金の穴埋めを行うべきだと主張していた。
GMBのJ.ボーデン・エネルギー担当事務局長は今回、ムーアサイド計画を後退させた数々のトラブルに言及し、諸外国による提案のなかでも最も新しい中国政府のオファーは、東芝問題の教訓を英国民がもっと学ばねばならないことを示唆していると述べた。同事務局長によると、英国は経年化した既存の原子力発電所に代わる新しい発電所をどうしても必要としており、天候に左右されるような太陽光や風力とは異なる無炭素電源を確保しなければならない。その上で、ムーアサイド原子力発電所は、英国が今後数十年にわたって、国内産業その他で必要なエネルギーを確保するにあたって、欠くことの出来ない一部分であると強調した。家の明かりを灯し続けるのも、産業界に電力を供給するのも、国家の役割。最終的に自らが負うべき責任を、他国の政府に引き受けさせるために世界中探して回るよりも、英国政府自身が介入すべきだとした。同事務局長はまた、英国における民生用原子力産業はかつて、世界中の羨望の的だったと指摘した。ムーアサイドおよびその他の新規原子力発電所は、英国が政府主導の産業戦略を進める上で重要な土台となるもの。それを中国であれ韓国であれ、他の誰かに委ねようとするのは本当の解決策とは言えない。英国政府はこれ以上、消極的な傍観者であり続けることは出来ないと訴えている。