中国の核工業公司、進行波炉開発で石炭大手の神華集団と投資協力協定
中国核工業集団公司(CNNC)は9月26日、第4世代の原子力発電技術と言われている進行波炉(TWR)の開発を加速するため、中国国有の石炭生産大手である神華集団と戦略的協力と投資を行う協定を締結したと発表した。安全性が改善された第4世代原子炉の開発は、クリーン・エネルギー開発の促進を目指した中国の原子力中長期開発計画に沿うもので、CNNCは国際原子力市場における中国の競争力強化を目的にTWRを開発中。一方の神華集団は今年8月、国内5大電力会社の1つである国電集団と合併することで基本合意しており、今後は発電も手がける大手エネルギー企業としてCNNCのTWR開発に投資していくと見られている。同じ日に両社はまた、浙江浙能電力公司(浙能電力)と河北建投能源投資公司(建投能源)も交えて、TWR開発への共同出資企業「中核TWR投資(天津)有限公司(仮称)」を河北省天津に設立することで合意(=写真)。浙能電力が証券取引所向けに作成した資料によると、総投資額7.5億元(約127億円)というこの合弁企業では、CNNCの投資用子会社と神華集団がそれぞれ35%と30%出資するほか、浙能電力と建投能源が10%ずつ出資。残りの15%は、福建省の華電福新能源公司が出資すると明記されている。TWRは劣化ウランや天然ウランを燃料とする次世代型の高速炉で、冷却材には液体金属ナトリウムを使用。少なくとも40年間は、燃料交換や使用済燃料の搬出なしで運転を継続することができると言われている。CNNCの発表によると、既存の軽水炉では天然ウラン中に0.7%しか存在しないウラン235を濃縮して使用する一方、TWRであればウラン資源の30~40%、さらには60~70%利用することも可能になる。ウラン濃縮と使用済燃料再処理のニーズを大幅に削減することで、発電コストのみならず環境上、核拡散上のリスクにともなうコストも低減できると強調している。
進行波炉の有用性は、マイクロソフト社の創業者として知られるビル・ゲイツ氏も注目しており、同氏が後援する米国の原子力開発ベンチャー企業、テラパワー社も2006年からTWR開発を進めている。この関係で、同社とCNNCは2015年9月、原型炉の共同開発で協力するための了解覚書をワシントン州で締結した。CNNCは今回の発表の中で、王寿君・会長を団長とするCNNC代表団が7月下旬にテラパワー社を訪問していたことに言及。合弁事業体を設立する可能性も含め、共同作業の実施分野を特定すべきとの協議がゲイツ氏との間で行われたことを明らかにしている。