米パリセード原子力発電所、早期閉鎖から一転、2022年まで運転継続へ

2017年9月29日

©エンタジー社

 米国のエンタジー社は9月28日、ミシガン州のパリセード原子力発電所(85,7万kW、PWR)(=写真)で2018年10月1日に予定していた早期閉鎖日程を取り消し、現行の電力売買契約が満了する2022年春まで運転を継続すると発表した。
 同発電所は元々、大手エネルギー企業のコンシューマーズ・エナジー社が2007年にエンタジー社に売却した発電設備で、その際にコンシューマーズ社は、同発電所の全発電電力を15年間にわたって購入する契約(PPA)をエンタジー社と締結していた。その後の市場状況が変化したことから、エンタジー社とコンシューマーズ社は協議した上で2016年12月、同発電所を4年前倒しの2018年に永久閉鎖すると決定した。しかし、PPAの打ち切りに際してコンシューマーズ社が必要とする契約買取りコスト1億7,200万ドルのうち、同社が電気料金に上乗せして回収することをミシガン州の公益事業委員会(MPSC)から許された額は1億3,660万ドルのみ。PPAを修正するよりも、2022年4月までそのまま履行する方が双方にとって得策との判断により、両社は早期閉鎖を取りやめたと説明している。

 米国では現在、電力事業者間の伝統的な相対取引をベースとする卸電力市場が運営されている州と、系統運用機関が小売り競争を導入した組織的取引市場を運営している州が混在。エンタジー社は今回、1度下した早期閉鎖判断を覆す結果になったものの、自由化された市場環境下においては、原子力による電力販売事業から撤退するという戦略を今後も維持していくとした。手続き上の混乱が生じたことについては、顧客であるミシガン州南西部の自治体と従業員に謝罪。その上で、必要な投資はすべて継続的に行うとともに、厳格な認可基準に沿って人員配置も適切に維持すると保証した。
 また、PPAの修正手続を打ち切ったことで、株主等へ自由に分配できるキャッシュ・フローが1億~1億5,000万ドル分、プラスになる見通しだと指摘。現地の報道によると、エンタジー社とコンシューマーズ社が早期閉鎖によって節約可能と見積もっていた額について、MPSCがいくつかのコスト試算係数を変えて計算したところ、運転を継続する方が同発電所の顧客にとって好ましい結果が出ていたとされる。さらに、発電所の運転計画が変更になったため、現在適用されている経理規則の下では燃料費や燃料交換経費、資本支出などが新たに発生することはなく、それどころか、これらの経費は運転期間中に減価償却されると強調している。