米エネ省、ボーグル3、4号機建設計画に37億ドルの追加保証を提案
米国で約30年ぶりの新設原子炉となるジョージア州のA.W.ボーグル3、4号機(各PWR、110万kW)の建設計画を後押しするため、米エネルギー省(DOE)のR.ペリー長官は9月29日、建設コストが増大した同計画に対する政府の追加融資保証として最大37億ドルの適用を提案すると発表した。DOEは2010年2月、同計画に総額83億3,000万ドルの融資保証適用をすでに承認しており、追加保証にともなう最終条件についてオーナー企業グループとの交渉がまとまれば、政府は合計約120億ドルを同計画の支援に投入することになる。
同長官は、「米国における原子力発電の将来は明るいと確信しており、革新的な原子力技術の開発で米国がリーダーとしての立場を一層拡大することを期待する」と明言。ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代設計「AP1000」を採用した計画としては米国初となるボーグル3、4号機は、信頼性やトラブル等による機能停止からの回復力の高い送電網の確保や、経済成長の促進、米国のエネルギー供給保証と国家セキュリティ強化という観点から、米国の重要なエネルギー・インフラ・プロジェクトであるとの考えを強調した。
今年3月にWH社が倒産申請したのにともない、AP1000設計を採用したサウスカロライナ州のV.C.サマー2、3号機建設計画では、事業者のスキャナ社とサンティー・クーパー社が7月末、両機とも完成を断念すると発表した。一方、ボーグル計画では、サザン社を中心とするオーナー企業グループが8月、工事を続行する方針をジョージア州の公益事業委員会に提案。WH社とは新しい「サービス協定」を締結しており、WH社が現行のエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を放棄することや、プロジェクト管理業務を含むいくつかの未履行契約をオーナー企業の一部がWH社から引き継ぐことなどが決定した。3、4号機はそれぞれ2021年11月と2022年11月の完成を目指すとしているが、それには、東芝がWH社の親会社として保証した最大36億8,000万ドルの支払いに加えて、発電税控除の適用期限を延長する法的措置などが不可欠と見られている。
米国では「2005年エネルギー政策法」に基づき、国内のエネルギー供給拡大の柱と位置付けた原子力発電について、複数の支援策が打ち出された。すなわち、(1)先進的原子力発電所を含む革新的発電施設を対象に、建設費の最大80%まで政府が融資保証する、(2)2021年1月1日までに運転開始した最大600万kW分の原子力発電施設に対し、8年間にわたって1.8セント/kWhの税額控除を行う、(3)規制手続や訴訟等で建設が遅延した原子力発電所の損失額に対し、最大6基を対象に総額20億ドルを上限とした補償を行う、などである。
2010年にボーグル計画に適用された融資保証83億3,000万ドルは、オーナー企業4社のうち3社で配分することになっており、サザン社最大の子会社として45.7%出資するジョージア・パワー社(GPC)に34億6,000万ドル、30%出資するオーグルソープ電力(OPC)に30億6,000万ドル、22.7%出資するジョージア電力公社(MEAG)に18億ドルとなっている。残り1.6%を出資するダルトン市営電力は、融資保証申請を行っていない。また、今回ペリー長官が提案した最大37億ドルの融資保証は、2014年12月にDOEが先進的原子力プロジェクトを対象に招請状を発出した保証枠125億ドル分から拠出される計画。3社の配分としては、GPCに16億7,000万ドル、OPCに16億ドル、MEAGには3つの子会社を通じて合計4億1,500万ドルを割り当てるとしている。