UAEの導入初号機起動に先立ち、IAEAが運転安全評価レビュー
原子力発電導入初号機の運転開始が2018年に予定されているアラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原子力発電所において、国際原子力機関(IAEA)は運転前の安全評価レビューを完了したと10月5日に発表した。
140万kW級の韓国製PWRを4基同時に建設している同発電所で18日間のレビューを終えた運転安全評価調査団(OSART)は、従業員のリーダーシップ力開発プログラムなど発電所の管理面で安全運転に向けた取り組みが認められたと評価する一方、本格的な運転開始の準備で改善の余地がある分野をいくつか特定した。OSARTは通常、運転開始した原子力発電所について安全性の向上を図るため、IAEAが組織する多国籍の専門家チームで、IAEAの安全基準に照らして発電所の安全性能を客観的に評価。加盟国の要請に応じて派遣しているもので、不十分と判断された部分については勧告と示唆を提示することになっている。
バラカ原子力発電所では2020年までに4基すべてを完成させる計画になっており、事業者の首長国原子力会社(ENEC)は2016年5月、安全な運転と管理を受け持つ子会社として「NAWAHエナジー社」を設立すると発表。同年10月には、同発電所の建設プロジェクトを受注した韓国電力公社(KEPCO)が、NAWAH社に対し18%出資することが明らかになった。
今回のOSARTで、専門家15名のリーダーを務めたIAEAのP.タレン安全運転課長は、「原子力発電所の運転経験が全くない国で大型の近代的な原子力発電所を建設する場合、安全性の確保を継続的に牽引する上級リーダーが組織の全レベルで必要になる」と指摘。その上で、世界中の原子力発電所が共有すべき良好事例として、次の点を同発電所で特定できたと述べた。すなわち、(1)リーダーシップ力の開発プログラムによって、文化や国籍も様々なスタッフが安全運転に集中的に取り組む強力なチーム体制を維持、(2)原子力関係従業員の技能・訓練を整備・強化するUAE国家技能局(NQA)を設置、(3)トラブル発生時に迅速なコミュニケーションとアクションが取れるよう、サイト外の機関や関係者と良好な関係を構築、(4)タイトな訓練日程にコスト効果の高い方法で対応するため、中央制御室のシミュレーターを導入、などである。
一層改善すべき分野としては、次の点を勧告した。まず、管理者は作業に際して効率的に動かねばならず、機器の安全性と信頼性を確保するために保守点検作業の監督業務を改善すること。包括的な監視プログラムとその実施手順はタイムリーに開発・確認・承認すべきであり、建設期間中と起動時に設計変更があれば、それらすべてが運転・保守の手順と訓練に反映されるよう、変更点の設定管理を強化すべきだとした。
こうした内容を盛り込んだ報告書案がOSARTから発電所経営陣に提示されており、経営陣と連邦原子力規制庁(FANR)は同案に対し、事実に基づきコメントする機会が与えられる。IAEAではそうしたコメントをさらに審査した上で、最終報告書を3か月以内にUAE政府に提出する予定。経営陣側としては今後、改善の必要性が指摘された項目に取り組む考えで、18か月以内にフォローアップ・レビューをIAEAに要請する方針であることを明らかにしている。