WANO、原子力産業界の若手有志による国際NGOとの協力強化
世界原子力発電事業者協会(WANO)は10月16日、世界の原子力産業界の若手技術者や研究者有志による国際NGO「原子力青年国際会議(IYNC)」との協力を一層強化するため、了解覚書を締結したと発表した。両者間の協力を促進することで、共有課題である原子力発電所の安全確保で一層の向上を図るとともに、原子力産業界の将来を担う若者世代としての自発的な戦略や目標の達成に役立てることになる。
WANOはチェルノブイリ事故を契機に、世界中で440基以上の商業炉を保有する原子力発電事業者が、原子力発電所の安全性と信頼性を最高レベルまで高めるために設立した非営利団体。今回の覚書を通じて、IYNCの若手技術者達がWANOとその活動に親しめるよう緊密に連携するだけでなく、IYNCの目標の1つである「熟練作業員の知識を若手技術者や専門家に継承」を一層加速し、若手技術者同士のネットワーク構築にも貢献する考えだ。また、同覚書によって、必要なスキルや知識を身につけるための指導・助言プログラム、ワークショップ、セミナー、実務研修制度などを若手技術者らに提供。専門能力をさらに高めるための機会としてほしいと強調した。
IYNCでは、世界45か国を代表する原則35才以下の若手原子力技術者らが、原子力の平和利用促進や世代と国境を越えた知識の継承を目的とする国際会議を、2年に1度のペースで開催している。2000年にスロバキアのブラチスラバで初の会議を開催したのが皮切りで、プログラムの策定や講師の招聘、参加者の募集、資金調達と言った運営のすべてを、IYNCの有志が担っているのが主な特徴。論文発表や質疑応答を通じて専門情報を交換するほか、参加型プログラムを数多く取り入れて参加者同士の親睦が深まるよう工夫している。また、世界各地の「原子力青年ネットワーク連絡会(YGN)」、およびその他の若手組織とも連携しており、効果的な人的ネットワーク作りの場を提供。2016年7月に中国・杭州で開催した第9回会議には、日本を含む32か国から400名以上が参加した。次回会議は、2018年3月にアルゼンチン・バリロチェでの開催が予定されている。
IYNCのD.ジャニン代表は、WANOと結んだ覚書によって「原子力安全に対する若者世代の自発的取り組みを促進する重要性について、上級指導者のレベルで議論が深められる」と指摘した。WANOのP.プロゼスキーCEOは、「原子力産業界で熟練作業員からの知識継承と人的ネットワークの構築を促進することや、若手技術者に専門能力向上の機会を提供することは、今後も原子力発電所で安全かつ信頼性の高い運転を継続していく上で重要だ」と明言。その上で、覚書の締結は、WANOとIYNCが共通する目標の達成と、その最優先事項である原子力安全の向上に向けて、一丸となって取り組むことを意味していると述べた。