南ア:新設候補サイトの1つが環境影響評価をクリア
南アフリカで原子力発電設備の調達を担当する南アフリカ電力公社(ESKOM)は10月13日、政府の原子力発電所新設方針に沿ってサイト許可(NISL)を申請していた2サイトのうち、西ケープ州のドイネフォンテインに対して、環境問題省(DEA)が環境影響面の許可を発給したと発表した。「ニュークリア1原子力発電所」と仮称される新設計画で、発電所設備と付帯インフラがドイネフォンテインの環境に及ぼす影響に関する報告書の最終版(F-EIR)を承認したもの。これによりESKOM社は、南ア唯一の原子力発電設備であるクバーグ発電所に隣接する同サイトで、新たな原子力発電所の建設に向けた手続をさらに進めることができる。
南ア政府は2010年の統合資源計画(IRP)に基づき、2030年までに960万kW分の原子力発電設備を新たに建設することを計画。ESKOM社は2016年3月、候補に上がっていた5サイトをドイネフォンテインと東ケープ州タイスプントの2か所に絞り込んでNISLを国家原子力規制当局(NNR)に申請した。中立的立場の環境影響関係コンサルタントであるGIBB社が取りまとめたF-EIRによると、タイスプントの方が原子力発電所立地点として好ましいと考えられるものの、ESKOM社としてはこれまで、両サイトに同等の適性があると認識しており、NISLの取得手続は両サイトで継続的に進めていく考えを明らかにした。
ESKOM社の首席原子力担当官は、環境影響評価作業全体を通じて、これまでに経験豊富な専門家が35種類の調査を実施したほか、国民を参加させる包括的な手続も実行に移してきたと強調。ドイネフォンテインで承認が得られたことは、そうした広範な作業が適切であったことを証明するものだと述べた。ESKOM社は今後、GIBB社とともに今回の決定内容を確認した上で、規制の範囲内で作業を行うが、タイスプントを含めた残り4つの候補地についても致命的な欠陥が特定されていないため、将来的に利用する可能性は残っていると指摘した。
新設計画を進めるにあたり、南ア政府は大手原子炉メーカーを擁する様々な国と二国間の原子力協力協定を締結。ESKOM社は入札の実施に先立ち、原子力開発プロジェクトへの参加経験や資金調達方法などの情報提供を原子力市場に依頼する文書(RFI)を2016年12月に発出した。これに対する市場の反応は良好で、今年2月にESKOM社は「世界中の27社から情報提供の意志があるとの回答を得た」と発表。これには中国やフランス、ロシア、および韓国の国営企業が含まれるとしていた。
しかし4月に入り、西ケープ州の高等裁判所は、新設計画に実施根拠を与えるために2013年と2016年に当時のエネルギー相が下した2つの決定は違法であり、無効とするよう指示する裁定を下した。同月にエネルギー省に着任したM.クバイ大臣は、国内経済が8年ぶりで後退したこともあり、新設計画の見直しを6月の議会で示唆する一方、J.ズマ大統領は、「国として支払い可能なペースと規模で新設計画を進める」と断言。理由として、原子力発電が南アの将来的なエネルギー供給を保証する戦略の一部であること、地球温暖化防止の観点からも重要であるとの見方を強調した。