ロシア、バラコボ2号機の運転期間を26年延長、合計56年間に

2017年10月19日

©ロスアトム社

 ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は10月17日、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が東部のサラトフ州で稼働するバラコボ原子力発電所2号機(100万kW級PWR)(=写真)の運転期間を、2043年まで26年間延長することを許可したと発表した。これにより、1987年に送電開始した同炉の運転期間は、合計で56年間に延長されることになる。
 ロシアでは、第3世代プラスのロシア型PWR(VVER)設計として開発した「AES-2006」の耐用年数を当初から60年に設定している一方、それ以前のVVERにおける設計上の運転期間は最大30年。そのため、国内では連邦政府の原子力発電所開発プログラム、および民生用原子力発電公社であるロスエネルゴアトム社の「2013年~2023年までの運転期間延長プログラム」に基づき、運転開始後30年が経過しつつある原子炉から適宜、10~25年ほど運転期間を延長する対策を進めている。ロシアはまた、輸出したVVERに対しても、運転期間延長や機器の最新化プロジェクトを含めたあらゆる保守・改修サービスを提供。2016年だけでロスアトム社傘下の担当企業、ルスアトム・サービス社の国外契約による収益が対前年比33%増の7,100万ドルに増加するなど、ロスアトム社において最も成長著しい事業の1つだとしている。

 専門家による原子炉の状態調査も含め、バラコボ2号機で運転期間の延長に向けた準備作業が始まったのは2012年のこと。同発電所では、運転期間延長の正当性を示す文書の作成や大規模な改修作業を開始した。追加される運転期間に備えて機器類の技術的コンディションを整える作業など、原子炉の物理的パラメーターや設計特性を最新の基準や要件に適合させる必要があり、同発電所が提出した関連文書はボルガ地域間行政原子力・放射線安全監督機関の専門家が審査。今年7月には準備作業の最終ステージとして、専門家チームが直接同発電所を視察し、2号機が運転継続できる状態であるか注意深く調査したとしている。

 国外のVVERに関しては、ルスアトム・サービス社が現在、10か国で稼働中の22基と建設中の8基に対して、顧客のニーズと原子炉毎の特徴に合わせた包括的ソリューションを供給している。現時点の契約総額は4億6,000万ドルを超えており、複雑なプロジェクトが進行中の国としては、アルメニア、イラン、ブルガリア、中国、ハンガリー、スロバキアを挙げた。
 その中でも、運転期間延長プロジェクトはロスアトム社にとって重要分野と位置付けられており、同社は2015年6月、アルメニア唯一の商業炉であるアルメニア2号機(40万kW級VVER)の運転期間を、2026年まで10年延長する総額3億ドルのサービス契約に調印した。また、ブルガリアでは2014年9月にコズロドイ5号機(100万kW級VVER)、2016年1月には同6号機(100万kW級VVER)について、それぞれの運転期間を合計60年に延長するための実行可能性調査実施契約を同国企業と締結。両炉は同国の総電力需要の33%を賄う重要電源であることから、国民に価格の適正な電力供給を保証するとともに、国家経済の競争力を強化する目的で、長期的に利用していく方針と見られている。