英ロールス・ロイス社、ヨルダンでのSMR建設でFS実施覚書

2017年11月10日

 英国で小型モジュール炉(SMR)開発の企業連合を率いるロールス・ロイス社は11月9日、ヨルダンで同社製SMRを建設するための技術的実行可能性調査(FS)実施に向けて、ヨルダン原子力委員会(JAEC)と了解覚書を締結したと発表した。
 同社によると、世界では電気自動車などの新技術の導入により、一層のエネルギーが必要になる見通しであるのに加え、地域冷房や脱塩などでも需要が高まっていることから、ロールス・ロイス社が開発するSMR技術に国際的な関心が集まっている。大型炉よりも低コストで低炭素エネルギーを供給できるSMRにより、英国がCO2排出量の削減目標を達成する一助とするほか、重要な輸出チャンスを創出する考えだ。
 一方ヨルダンは、ロシアとの協力により、2基の100万kW級PWRを2023年以降に導入する計画を進めつつ、2016年12月に熱出力0.5万kWの韓国製多目的研究炉を、同国初の原子力設備としてヨルダン科学技術大学内で完成させた。SMRであれば、水不足や容量の小さい送電網といったヨルダン特有の課題を、数多く解決することができるとの期待を示している。
 
 今回の覚書は、パリの英国大使館で両者の幹部が調印した。同覚書に基づき両者は今後、発電と脱塩を目的としたSMRをヨルダン国内で建設する上で必要な要件を、技術面や安全面、経済面、資金調達面などで特定していく方針。このようなFSを通じて得られた結果は、JAECが建設計画を次の段階に進める投資判断を下す際の、資料として活用されることになる。

 高級車メーカーとして知られるロールス・ロイス社は、英国海軍の原子力潜水艦用原子炉製造プログラム等に携わってきたが、「世界の民生用原子力市場は今後、年間500億ポンドの規模に成長する」との見通しの下、2008年に本格参入用の専門事業ユニットを社内に設置した。すでに中国の原子力発電所に対し、安全関連のデジタル計測制御(I&C)系を多数納入。英国内では、原子力サプライ・チェーンの再開発・強化を図るために政府が2012年に設置した産官学の連携組織「先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)」で、産業界の取りまとめ役を担っている。
 今年9月には、SMR開発が英国の将来的なエネルギー・ミックスや産業界で果たす役割についての分析報告書を公表しており、「1MWhあたり60ポンド(約8,900円)で電力供給が可能なSMRの開発は、英国産業界にとって千載一遇の事業チャンス」との認識を提示。風力や太陽光に対しても競争力があるとしたほか、革新的なモジュール工法により、大型炉の建設プロジェクトにありがちな複雑な建設工事や建設期間の長期化、経費の増加といった問題を回避できるとしている。