カナダ、使用済燃料の深地層処分場候補地でボーリング調査開始
カナダで使用済燃料の処分事業を進めている核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は11月6日、地下500mの深地層に建設する最終処分場のサイト選定プロセスにおいて、最初の初期ボーリング調査を候補地の1つであるオンタリオ州のイグナス地域で開始したと発表した。同処分場の受け入れに関心を表明したオンタリオ州とサスカチュワン州の22地点のうち、9地点が予備評価後に地質調査や制限付きボーリング調査を含む段階に進んだが、このうち2地点についてNWMOは今年6月、「これ以上の地質調査は行わない」と述べ、候補地の中から除外。イグナス地域を含む残りの7地点で試掘坑を掘削し、採取した試料の分析を行っていく計画で、使用済燃料を長期間、安全に処分することが可能な岩盤層を持つ処分場建設候補地を、2023年までに1地点に絞り込む方針だ。
カナダでは、稼働中の加圧重水炉19基から排出される使用済燃料を再処理せず、発電所サイト内で30年間、集中管理を行うことになった場合はその施設でさらに30年間保管した後、約60年後から深地層に最終処分する方針。この処分概念は1990年代頃まで国民の支持が得られておらず、NWMOは適応性のある代替処分案について、全国の18,000人を対象に3年をかけて広範な調査を行った結果、2005年に「適応性のある段階的管理(APM)」計画を連邦政府に提案した。
APMでは、技術的方策として使用済燃料を深地層に集中的に閉じ込め・隔離することや、モニタリングを継続的に行うこと、回収可能性を残すことなどを盛り込む一方、管理システムとしては、「実施速度や方法に柔軟性を持たせる」、「段階的で適応性のある意思決定を行う」、「オープンで公正な立地選定プロセスを経る」、などを明記。連邦政府は2007年にAPMを選択するに至っている。
その後NWMOは、原子力施設が立地する地方自治体のフォーラムや、連邦政府と州政府の部門横断的なフォーラム等を形成。一般市民とはオープンハウスやウェブサイトを通じて対話を行ったほか、先住民族の様々なフォーラム、複数の政党とも対話の機会を持つなど、多くの人々と緊密に連携しながら2008年に9段階で構成される「サイト選定プロセス案」を共同設計した。同プロセスは2010年に開始され、現在は第3段階の「潜在的な適合性の予備評価」における第1フェーズ(机上調査)が完了。ボーリング調査の実施を含む第2フェーズ(フィールド調査)に入っている。
イグナス地域で始まったボーリング調査では、約1kmの深さまで掘削するため、少なくとも3か月かかる見通し。試掘坑の掘削と試料の試験が完了した後は、地球科学や環境学、工学、および処分場の安全性に関する専門家が、約1年かけてデータの分析を行う。その他の6地点(オンタリオ州のヒューロン=キンロス、サウスブルース、ホーンペイン、マニトウェッジ、エリオットレイク、ブラインドリバー)でも、NWMOはすでに様々な調査を進めており、地元の住民や先住民と協力しながら2018年以降、初期ボーリング調査を実施するとしている。