スウェーデン、リングハルス3、4号機の安全性改善で約120億円 投資
スウェーデンのバッテンフォール社は11月17日、リングハルス原子力発電所(=写真)3、4号機(各110万kW級PWR)に独立の冷却システムを装備するため、同社とリングハルス電力会社の取締役会が合計約9億クローナ(約120億円)の投資判断を下したと発表した。原子力発電所における安全面のアップグレードは、2020年以降も運転継続する際の要件として、スウェーデン放射線安全庁(SSM)が課していたもので、同社はすでに昨年6月、フォルスマルク原子力発電(100万kW級BWR×3基)に関して、同様の安全性改善で投資を行うと発表していた。今回の決定により、現時点ですでに安全な状態にあるリングハルス3、4号機に対し、追加の安全システムが設置されることになり、2040年代まで電力供給が可能になると同社は強調している。
福島第一原子力発電所事故の発生を受け、欧州連合(EU)域内では2011年6月から原子力発電所のストレステストが行われ、SSMは国内原子力発電所の安全性改善行動計画を欧州原子力規制者グループ(ENSREG)に提出。その後の2014年12月には、暫定措置として2017年末までに独立の炉心冷却機能を導入し、2020年末までに炉心冷却システムの設置を終えるよう同行動計画を改定した。同システムの目的としては、過酷事故にともなう全電源喪失時に、格納容器外部に設置した貯水槽から24時間以上、冷却水を圧力容器内に追加で送り込むことだと説明。水のくみ上げに使用する駆動機構は、原子炉防護システムから切り離されていなければならず、別個の供給電力を使うのが要件だとしていた。
なお、バッテンフォール社は同日、リングハルス1、2号機(90万kW級のBWRとPWR)について決定していた永久閉鎖の日程を、最大6か月間延期すると発表した。これにより、1号機は遅くとも2020年12月まで、1号機よりも1年早く営業運転を開始した2号機は2019年12月まで運転することになった。購入済みの核燃料を使い切らないまま、計画中の最終処分場に送ってしまうより、最大限活用することを目指したもので、たとえ6か月ほどでも、CO2を排出しない原子力発電所の運転期間延長は、地球温暖化防止や国内電力供給にとっても有益との認識を示した。
1970年代半ばに運転開始した両炉を、同社は2025年頃まで運転する予定だったが、近年の電力価格低迷を背景に、発電コストが上昇し採算性も悪化。新たな安全要件を満たすための投資や原子力税等を考慮した結果、2018年~2020年の間に両炉とも閉鎖すると2015年4月に公表していた。一方、3、4号機とフォルスマルク発電所の3基については、現行プラン通り2040年代初頭まで60年間稼働させるとしている。