ITER機構、2025年のファースト・プラズマ達成スケジュールを再確認
フランス南部で国際熱核融合実験炉(ITER)を建設中のITER機構は11月16日、引き続き良好な作業の積み重ねにより、一年前の理事会で再設定された「2025年にファースト・プラズマの達成」という目標に向けて、プロジェクトが順調に進展中であることを第21回理事会で確認した。2017年版の詳細な管理評価報告書や技術実績の指標等をプロジェクトに参加する7か国・地域の代表者とともにレビューした結果、明らかにしたもの。要求度の極めて高い建設工事と機器製造スケジュール、主要装置と支援システムにおける技術要件の厳しさにも関わらず、ファースト・プラズマ達成(運転開始)までに必要な機器・システムの製造は61%、建設工事全体では49%の作業が完了したとしている。
ITER計画では、核融合エネルギーが科学技術的に実行可能であることの実証を目標としており、日本と欧州連合(EU)、ロシア、米国、韓国、中国、インドが参加している。2005年に建設サイトをサン・ポール・レ・デュランス(呼称を「カダラッシュ」から行政住所に変更)に決定した後、2013年10月に本格着工。42ヘクタールの敷地内に、トカマク型実験炉の格納建屋と診断棟、およびトリチウム棟の3建屋等で構成されるトカマク複合施設を建設するため、ベースマット部分へのコンクリート打設が開始された。
同機構は当初、2020年頃のファースト・プラズマ達成を予定していたが、主要機器の一部で製造に遅れが生じたため、2015年3月に機構長に就任したB.ビゴ氏は建設スケジュールとコストの見直しに着手。同年11月の理事会において、ファースト・プラズマの達成を2025年12月とし、機器の組立経費の増額分を約44億ユーロ(約約5,800億円)とする見直し案が提示された。しかし、参加国から承認が得られず、外部の専門家グループが独自にこれらの提案内容をレビュー。その後の議論を経て、2016年11月の第19回理事会で、(1)ファースト・プラズマ達成を2025年12月、本格的な運転開始を2035年12月とすることが最終決定した。また、(2)建設段階のコストを2035年までで約52億ユーロ(約6,850億円)増額すること--については、各国の国内調整が完了前であることを考慮し、暫定的に承認されていた。
今回の理事会では、2016年1月以降、実施予定だった26件の作業がすべて完了するなど、厳しいスケジュールに沿って作業が進展中である点が報告された。また、新しい測定基準を採用したことにより、建設工事や機器の製造、組立・据付の進捗状況を物理的に評価することが可能になり、主要な建屋やシステム、製造中の機器についても個別に進捗率を計算できるとした。さらに、参加国の弛まぬ努力により、増加したコストの承認も含め、様々な課題を乗り越えることが可能になると同機構は強調。プロジェクトが持つ価値や使命、ビジョンに対する理事会メンバーの強い信念が、改めて確認されたとしている。