英政府、新しい産業戦略の中で原子力を不可欠かつ重要と位置付け

2017年11月28日

 英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は11月27日、英国全土で国民の生産性と収益力の向上を目指す新しい産業戦略白書を公表した。英国の国力を足がかりに、テクノロジーの変化によるチャンスを捉えて、英国経済を発展させるための長期的ビジョンを示したもので、課題への取り組み上、必要となるプログラムの基金を通じて、今後3年間で7億2,500万ポンド(約1,075億円)を投資すると約束。原子力については、「英国全体の成長を促すとともに、生産性を向上させるには不可欠の部門」と位置付けており、将来にわたって低炭素な電力を供給するなど、英国のエネルギー・ミックスにおいて必須の電源であるとの認識を明確に表明している。

 BEISの説明によると今回の戦略は、米国に本社を置く世界的製薬会社のMSD社が、英国内で大規模な戦略的投資を行うと決定したことに端を発している。このため、将来的な事業チャンスを確保できるよう支援する最初の4部門の1つとして、政府は生命科学を特定した。その他の部門についても、複数の変革的「部門別協定」を政府が民間との戦略的な長期のパートナーシップとして調印し、継続的に推し進めていく方針。最終的に2030年までに、英国を世界で最も技術革新の進んだ国にすることが目的だとした。
 この関連でT.メイ首相は一週間ほど前、研究開発への投資レベルが現在はGDPの1.7%であるのに対し、これを2027年までに2.4%まで引き上げる方針を公表した。これにより、先進技術に対する追加投資額は今後10年間で約800億ポンド(約11兆8,573億円)に拡大。産業部門全体の変革を促して新たな産業を創出し、英国全土で技術革新を支援していくとしている。

 原子力部門においては、古い原子力施設の安全かつ効率的な廃止措置の専門的知見という点で、英国が世界をリードしているとBEISは指摘した。英国の原子力産業界は現在、英国原子力産業協会(NIA)のJ.ハットン卿によるリーダーシップの下、英国が国と地域、両方のレベルで競争力を増強するとともに、一層高い価値を得ることを目的とした意欲的提案の範囲について、政府と協議を進めているところ。
 原子力関係の「部門別協定」における産業界側の提案は、政府と協働することにより、国内の原子力発電所新設計画と廃止措置プログラムで、どれほどのコスト削減が達成できるかに集中した。英国の競争力や国内能力、および輸出力を向上させる機会や生産性を改善することは、双方にとって共通の利益があるとしており、産業界としては原子力供給チェーンから研究開発、能力開発までカバーすることを提案。ここでは、将来的に必要となる様々な労働力の調達が目的で、これにより、カンブリア州のムーアサイド原子力発電所建設計画、ウェールズ北部のウィルヴァ・ニューウィッド計画、サマセット州のヒンクリーポイントC計画、エセックス州のブラッドウェルB計画、サフォーク州のサイズウェルC計画で、10万人分の雇用創出が支援されるとしている。
 両者間の協議の詳細については、今後数週間以内にBEISが公表する予定である。