ヨルダン:米X-エナジー社製・小型高温ガス炉の建設可能性を検討
米メリーランド州を本拠地とする革新的原子炉設計の開発企業、X-エナジー社は11月28日、同社が開発している小型のペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」(熱出力20万kW、電力出力7.5万kW)(=図)をヨルダン国内で建設する可能性を検討するため、ヨルダン原子力委員会(JAEC)が同社との了解覚書に調印したと発表した。ヨルダンは、2基の100万kW級ロシア型PWR(VVER)を首都アンマンの東70kmのアムラで建設するため、2015年3月にロシアと政府間包括協定(IGA)を結ぶ一方、海水脱塩や地域熱供給にも利用可能な小型モジュール炉(SMR)の導入も積極的に推進中。2016年12月に運転員の教育訓練用を兼ねる多目的の韓国製「ヨルダン研究訓練炉(JRTR)(熱出力0.5万kW)」が、同国初の原子力設備としてヨルダン科学技術大学で完成したほか、11月上旬には、英ロールス・ロイス社製SMRを建設する技術的実行可能性調査(FS)の実施に向け、JAECが同社と了解覚書を締結している。
X-エナジー社によると、「Xe-100」は工期が短く、組立作業も工場内で可能というモジュール式の高温ガス炉。物理的にメルトダウン発生の恐れがない設計で、冷却材喪失時も運転員の介入なしで安全性が保たれるという。使用する燃料は、米エネルギー省(DOE)が開発していた3重被覆層の燃料粒子(TRISO)技術をベースとしたもので、DOEは2016年1月、官民折半による新型原子炉概念の開発支援対象の1つに「Xe-100」を選定。原子炉設計と燃料の開発および初期の許認可活動に対し、5年計画で総計4,000万ドルが交付されることになった。2017年3月に同社は、「Xe-100」の概念設計を正式に開始したと発表。9月には、セントラス・エナジー社(旧米国濃縮会社(USEC))との協力により、粒子燃料の加工施設を建設する計画と、2018年から試験規模で製造を開始する方針を明らかにしている。
今回の覚書締結についてX-エナジー社のK.ガファリアンCEOは、「発電や脱塩、熱利用にも役立つ「Xe-100」をヨルダンに建設できれば、先進的原子炉産業は飛躍的に前進する」とコメント。世界中の市場に同設計の販路を広げ、ヨルダンと同じくクリーンな大気や真水、エネルギーの供給保証といった目標を持つ国で、潜在的な顧客を開拓していきたいとの抱負を述べた。JAECのK.トゥカン委員長も、「高温ガス炉のポテンシャルがひとたび実行に移されれば、発電や脱塩、産業用として活用するチャンスがヨルダン国民にもたらされる」と明言。第3世代や第4世代技術の中心的役割を果たしていくとの期待感を表明した。