英政府、SMRなど次世代原子力技術の開発で包括的支援方策を公表

2017年12月8日

 英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は12月7日、小型モジュール炉(SMR)など次世代の新型原子炉プログラム開発で英国が世界のリーダー的地位を獲得するため、原子力産業界に対する包括的な支援方策を公表した。
 今後3年間に革新的な新型モジュール式原子炉(AMR)の研究開発や実行可能性調査、有望設計の開発促進などで最大5,600万ポンド(約85億4,382万円)を拠出するほか、最大8,600万ポンド(約131億3,489万円)を充当して、オックスフォード近郊のカラム研究所における核融合研究を加速。また、昨年開始した「原子力技術革新プログラム」を次の段階に進め、最大800万ポンド(約12億2,185万円)の予算で原子力安全・セキュリティの手法を向上させるとともに、新型核燃料の開発等を促進するとしている。

 今回の支援方策は、BEISが11月末に英国経済を発展させる長期ビジョンとして設定した「産業戦略白書」に続く措置。同白書の中で原子力は、英国全体の成長を促すとともに、生産性を向上させる不可欠の部門とされており、BEISのR.ハリントン・エネルギー担当相は、「将来にわたって低炭素な電力を供給できる原子力は、英国のエネルギー・ミックスにおける重要な一部分だ」と指摘。そのため、新たな支援方策によって原子力分野の技術革新を促進し、将来計画を一層明確なものにしたいと述べた。
 BEISのG.クラーク大臣も、英国の民生用原子力部門が2016年のGDPに対して64億ポンド(約9,774億円)の貢献を果たしたとする最新の民間調査結果に言及。今回の発表は、産業界が主導する技術革新の重要性を認めた上で、同部門が国内のみならず、世界的にも高いレベルの競争力を持ち続けられるよう、政府が下支えしていくことを意図したものだと説明した。
 また、同白書で政府は、技術革新が進みつつある複数の産業部門と、戦略的かつ長期のパートナーシップとなる「部門別協定」を締結していくと明言。原子力部門に関しては、政府と原子力産業界の協議の場として今年2月に再編成された原子力産業協議会(NIC)が12月7日、産業界としての「部門別協定案」を提示したことを明らかにしている。

新型モジュール式原子炉(AMR)
 出力が100万kW以下のSMRを含め、AMRを研究開発する2段階構成のプロジェクトに、政府は今後3年間で最大5,600万ポンドを提供する。このうち最大400万ポンド(約6億1,092万円)は第1フェーズにおける実行可能性調査用とするほか、最大700万ポンド(約10億6,911万円)を新型原子炉技術の評価と許認可を担当する規制当局の能力向上に充てる。この段階で支出金額に見合う価値があると明確に実証され、財務省が正式に同プロセスを再承認すれば、プロジェクトは第2フェーズに進展。最大4,000万ポンド(約61億925万円)がAMRのさらなる研究開発に投入されるとともに、最大500万ポンド(約7億6,365万円)が規制当局に支出されることになる。
 この関連でBEISは同日、実行可能性調査プロジェクトの実施支援でAMR設計のコンペを開始すると発表した。第1フェーズで最大8か月間の技術的実行可能性調査の支援を希望する者は2018年2月7日までにBEISに登録を行い、同月14日までに申請書を提出する必要がある。支援対象は同年3月末に決定され、5月1日に契約が締結される段取り。また、第1フェーズで支援対象に選定された設計の中から、第2フェーズの開発活動に対する支援対象が選定されるとしている。

2025年以降の新しい大型炉立地
 単機で100万kW以上の出力を有する大型炉についても、政府は現在、新しい長期的な建設計画の枠組を検討中。英国では国内の重要インフラ施設を開発する際、公正かつ迅速な判断が下せるよう国家政策声明書(NPS)を介した承認制度を取っており、2011年に承認された現行のNPSでは、原子炉がかつて稼働、あるいは現在稼働中の8サイトを、2025年までに原子炉新設が可能な候補地として指定していた。2026年から2035年までを対象とする新たなNPS案では、大型原子炉の立地に適したサイトを選定する「基準とプロセス」の改訂版を盛り込んでおり、12月7日から2018年3月15日までの間、第1回目のパブコメに付されるとしている。

第2フェーズの原子力技術革新プログラム
 民生用原子力部門における技術革新を支援するため、BEISは2018年までに主要な5分野に合計2,000万ポンド(約35億5,462万円)を拠出するプログラムを2016年11月に公表していた。同プログラムの第2フェーズにおいては、370万ポンド(約5億6,510万円)の予算で原子炉の設計と安全性に関するエンジニアリングを実施予定。ここでは、セーフティ・ケースの開発・評価用として、一層優れたツールを開発するほか、安全・セキュリティ関係の実績評価についても手法を改善するとした。
 また、430万ポンド(約6億5,674万円)で新型原子燃料の開発を促進。事故耐性燃料の開発が可能な、世界でもトップレベルの研究所を複数建設したり、通常運転時の新型原子燃料の挙動に関するシミュレーションや、コンピューター・モデリングを改善する。また、第4世代の原子炉設計開発も支援するとしている。