仏電力、アレバ社原子炉部門の株式75.5%を購入
財政難に陥った仏アレバ社を救済するため、同社の原子炉部門買収取引を進めていたフランス電力(EDF)は12月22日、現行のアレバNP社の子会社として設立される「NewNP社」の株式75.5%を購入する最終契約書に正式に調印したと発表した。
約2年間におよんだ作業手続の末、13日と14日にそれぞれの理事会による承認を受けて、原子炉機器や燃料集合体の設計・製造、および関連サービスを専門とするNewNP社の排他的支配権を、株式とともにEDFが2018年1月1日以降、保有することになったもの。残りの株式のうち、19.5%を三菱重工業が、5%は国際的な原子力エンジニアリング・研究開発サービス企業のアシステム社が購入予定で、これらの購入手続は、アレバ社とEDF間で売買手続が行われるのと同時に取られるとしている。
三菱重工業は、トルコへの輸出が決まっている第3世代+(プラス)のPWR設計「ATMEA1」を、アレバ社との折半出資による合弁事業体「ATMEA社」で協同開発。この関係で、NewNP社にも出資を行い、同社およびEDFとの連携を強化していく考えを今年7月に表明していた。同社はまた、原子炉部門の切り離し後にアレバ社が燃料サイクル関連部門を統合して設立した「NewCo」に対しても、日本原燃とともに5%ずつ出資している。
EDFによると、NewNP社の株式100%分の取引価格である24億7,000万ユーロ(約3,318億円)は、2017年度で予想される金利・税金・償却前利益(EBITDA)の約8倍に相当。12月31日に予定されている取引手続完了日の最終的な財務諸表に応じて、多少上下することが予想されるとした。また、手続完了日の後に計算される特定の業務目標の達成状況により、最大で2億4,500万ユーロ(約329億円)分の価格補完が考えられると述べた。
なお、この契約にはアレバ社の債務の移転は含まれておらず、完成の遅れにより建設費が増大したフィンランドのオルキルオト3号機(アレバ社製欧州加圧水型炉「EPR」)建設プロジェクト、および同プロジェクトの補完に必要な財源などは除外された。また、アレバ社傘下のクルーゾー・フォルジュ社が製造した、問題のある機器関連の契約も、親会社であるアレバ社の管轄に留め置かれる予定である。
今回の最終契約についてEDFは、原子炉容器の鋼材組成で異常が認められたフラマンビル3号機(EPR)について、仏原子力安全規制当局(ASN)が「運転に適している」との肯定的見解を示したことを受けて調印に至ったと説明。また、クルーゾー社の機器製造記録問題についても、包括的審査で満足のいく結論が出たことによるとした。EDFグループのJ.-B.レビィ会長は、NewNP社をEDFグループに統合することで、既存炉の運転期間延長を目的とした改修計画「グラン・カレナージュ」などの大規模プロジェクトで、作業効率を上げる一助にしたいと指摘。さらに、低炭素経済への移行で原子力が重要な役割を果たすと認識している国では、新規建設計画の受注競争力を強化していきたいとの抱負を述べた。