中国、福建省・霞浦で60万kWの高速実証炉を本格着工
中国核工業集団公司(CNNC)傘下の中国核能電力股分有限公司(CNNP)は昨年12月29日、同国の自主開発技術による電気出力60万kWの高速実証炉(CFR-600)を、福建省寧徳市の霞浦で本格着工したと発表した(=写真)。中国は核燃料サイクルの確立を通じて持続可能な原子力発電の開発利用を目指しており、すでに2011年7月に電気出力2.5万kW(グロス)の高速実験炉(CEFR)が、北京南部の原子能科学研究院(CIAE)内で送電を開始。その後、実証炉としてロシアから出力80万kWの「BN-800」2基の導入計画と、自主開発技術による建設計画を並行して進めていたが、現在は自主技術のCFR-600開発に重点が置かれている。
中国政府は2014年10月に、実証炉開発の全体的な計画案を承認しており、翌2015年7月に事業会社として中核霞浦核電有限公司が設立された。同公司には、CNNPと福建福能股分有限公司、華能核電開発有限公司、中国長江電力股分有限公司、寧徳市国有資産投資経営有限公司がそれぞれ、55%、20%、10%、10%、5%を投資。同月末にサイトの掘削が始まっていたもので、CNNPはCFR-600の完成を2023年に予定していることを明らかにした。
中国における原子力発電開発は、(1)熱中性子炉、(2)高速中性子増殖炉、(3)核融合炉--につなげていくという「三歩走」戦略に基づいており、これらに先進的再処理技術を組み合わせた核燃料サイクルにより、持続的な原子力発電開発を確保していく方針。第4世代の先進的原子炉技術と位置付けられた高速炉の建設は、この戦略の重要な1部分であるとの認識であり、中国は高速炉で天然ウラン資源の利用率を現在の約1%から60%以上に拡大する一方、放射性廃棄物の発生量は大幅に削減できると説明した。
また、国務院常務会議は2015年1月、習近平国家主席の経済圏構想「一帯一路」の重点施策として、原子力発電プラントの輸出加速を決定。中国が知的所有権を保有する第3世代のPWR設計「華龍一号」や多目的小型炉などに加え、第4世代炉である高温ガス炉や高速炉を、顧客国の幅広いニーズに応じて輸出する「原子力輸出強国」となることを目指すとした。
こうした戦略の実現を可能にする使用済燃料の再処理は、2004年に年間処理量50トンのパイロット試験施設が甘粛省で完成したものの、2010年にホット試験を実施した後は改造中。処理量800トンの商用再処理工場開発に関して仏アレバ社との商談を継続する一方、独自の商用工場開発計画も進めている。実証炉に続く高速炉開発については、100万kW級の商業炉を2030年頃から導入開始する計画であると伝えられている。
CFR-600の着工記念式に出席したCNNCの王寿君・会長は、高速炉開発は中国の主要な国家的原子力科学技術プロジェクトであると明言。持続可能な原子力発電開発のみならず、地元の経済発展促進にも有効との見方を表明した。CNNPも、実証炉の本格着工は、中国の原子力発電開発と原子力産業において新たな時代の幕開けになったと評価。国家的な使命である環境改善にも貢献可能な、CNNCの具体的な活動の1つでもあると指摘した。