ロシアで初の海上浮揚式原子力発電所の運転が承認

2018年1月12日

©ロシア建設省

 ロシア建設省傘下の設計評価機関である国家専門家審査会(Glavgosexpertiza)は1月9日、同国初の海上浮揚式原子力発電所(FNPP)として建設されている「アカデミック・ロモノソフ」(=写真)の運転を承認した。
 同発電所建設プロジェクトの設計文書や工事測量結果を同審査会の専門家が審査した結果、技術的な規制要件やその他の要件を満たしていると結論付けたもの。これにより、出力3.5万kWの「KLT-40S」原子炉を2基搭載したアカデミック・ロモノソフは、2019年にも極東地域北東端に位置するチュクチ自治管区のペベクで運転開始が可能になった。
 同地区では、1970年代から電力需要の約80%を賄ってきたビリビノ原子力発電所の4基(各1.2万kWのRBMK)が2019年から順次、閉鎖予定であるため、アカデミック・ロモノソフはこれらに代わり、40年にわたって同地区に電力や熱エネルギーを供給していくとしている。

 国家専門家審査会は、建設プロジェクトの設計評価分野について建設省の権限行使を許された非営利の専門家団体で、FNPP建設プロジェクトの見積コストについても適正であると判定した。同審査会によると、ロシアの統一エネルギー・システムは国土のすべてをカバーしているわけではなく、ロシア領の約半分を占める北部の遠隔地域や、それに類する地域に電力や熱エネルギーの供給を行うには、原子力利用が最も適した方法だと評価。また、FNPPは一日辺り最大24万立法mの海水脱塩に利用できるとの見方を示している。

 FNPPの建造プロジェクトには民生用原子力発電会社のロスエネルゴアトム社が出資しており、原子力潜水艦など軍需建造物を専門としていたセブマシュ造船所が、2007年にセベロドビンスク市で建造を開始した。しかし、軍需関係の契約が急増したため、作業は翌年に砕氷船の建造経験を持つサンクトペテルブルクのバルチック造船所(BZ)に移管され、2010年6月に船殻部分が完成。進水式も行われたものの、BZが破産したため新たな契約がBZの新オーナーとの間で締結された。
 2基のKLT-40Sは2013年10月に船体に据え付けられ、ロスエネルゴアトム社の親会社であるロスアトム社は2015年、チュクチ自治管区政府と結んだ協力協定の中で、最初のFNPPであるアカデミック・ロモノソフを同地区のペベクに係留すると明記した。2016年7月からアカデミック・ロモノソフの係留試験が始まったほか、同年10月からは、ペベクで係留用の陸上設備を含む港湾インフラの建設工事が開始されている。
 ロスアトム社の昨年12月18日付け発表によると、アカデミック・ロモノソフでは係留試験に続いてタービン・ローター調整機器のセッティング作業が行われている。機器・システムに関するこれらの試験や曳航準備が今年の春に完了し次第、同発電所をノルウェーとの国境に近い北極圏のムルマンスクに移し、秋から燃料の初装荷と起動作業を実施。発電所として全体的に完成させた後、北極海経由でペベクまで曳航するとしている。