英政府、新たな原子力保障措置体制における規制案を公表
欧州連合(EU)からの離脱にともない、欧州原子力共同体(ユーラトム)からも離脱することになる英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は1月19日、英国独自の原子力保障措置体制を構築するため原子力規制庁(ONR)と共同で策定している原子力保障措置「規制案」の予備段階の文案を公表した。
原子力保障措置の規制案は、ユーラトム離脱後の英国で新たな保障措置体制を運営する法的枠組となるもので、ユーラトム加盟国として得られている現行の法的枠組に取って代わることになる。英国では、昨年10月に新たな原子力保障措置(NS)法案が議会下院に提出されており、同規制案は、この新しいNS法案が修正する「2013年エネルギー法」の権限に基づき施行される。NS法案ではまた、ONRに追加の権限を与えることになっており、ONRはこれにより、英国が国際原子力機関(IAEA)と結んだ国際的な保障措置や核不拡散について、一定の責任を負うことになる。NS法案は昨年11月に下院の付属委員会での審議が完了、今月23日に下院本会議にかけられることになったため、BEISはこれに合わせて規制案を公表したもの。
政府としては、この規制案をこの春にも正式な公開協議に付す計画だが、これを予備段階で公表することにより、議会や産業界およびその他のステークホルダーに早い段階で関わってもらうのが目的。BEISのR.ハーリントン・エネルギー産業担当相は、NS法案が下院委員会の審議段階にあった昨年11月、英国の規制案がどのように策定されているかを明確にする目的で、予備段階での公表方針を明らかにしていた。
現在、策定作業は順調に進展しているものの、構成要素のいくつかについてはONRとの共同作業がさらに必要なほか、いくつかの要素は外的要因に左右される。ONRは今後数か月間、今後の保障措置体制の運営について各ステークホルダーと協議することになるが、政府としては年内にも、同規制案を議会に提出したいとしている。
規制案は2種類の規制で構成されており、それらは(1)英国における新しい民生用原子力保障措置体制の設定、(2)NS法案に基づくBEIS大臣の規制権限を決定づけるための、「民生用原子力活動」「核分裂可能な物質」「関連する国際協定」の定義付け設定--に関するものである。
NS法案が規制対象となる原子力関係「機器」と「施設」および「核物質」について、新たな定義付けを盛り込んでいるのに対し、規制案はこれに加えて、主に技術的な定義づけを明記。例として、施設の運転事業者は施設の基本的技術特性をONRに申告しなければならず、同施設における保障措置関係活動についても年間プログラムの概要報告が必要。ONRは施設の基本的技術特性に基づき、個別の保障措置条項を事業者に義務付けることになる。
また、事業者は対象となる核物質について、計量管理システムの維持を要求されるとしており、計量管理記録の保持やONRへの報告がこれに含まれるとした。核物質の輸出や出荷に関しては、パッキングする日の変更があった場合も含めてONRに事前の通知が必要である。さらに放射性廃棄物についても、事業者は当初の貯蔵リストと計量記録を提出しなければならない。
国際的な協定関連では、IAEAとの新しい保障措置協定に加え、英国は保障措置関係の義務事項を盛り込んだ新たな2国間原子力協力協定を米国やカナダ、豪州、日本などと結ぶことになるとしている。