米原子力インフラ評議会、廃棄物管理責務の履行をエネ長官に要請

2018年1月25日

 米国で原子力の推進と国内サプライ・チェーンの海外展開支援活動を促進している米原子力インフラ評議会(NIC)は1月23日、米国の民生用放射性廃棄物管理プログラムを迅速に進めていくため、新たな行動オプションを講じることをエネルギー省(DOE)のR.ペリー長官に要請した。
 DOEが各原子力発電所から使用済燃料の引取りを開始すると約束していた1998年1月から、今月で丁度、20年が経過している。これを契機に、将来に向けて放射性廃棄物管理プログラムを再構築し、新たなコース設定を行うには、これまで以上にDOE長官のリーダーシップが求められるとNICは強調した。具体的には、ネバダ州ユッカマウンテンにおける深地層最終処分場許認可プロセスの再開を念頭に、省内で専門部局を復活させるなど積極的な措置を取るべきだと主張。これにより、DOEは使用済燃料を引取るという法的責任の遂行に、真剣に取り組んでいることを明確に示すことが出来ると訴えている。

 NICは、関係企業約100社で構成される事業コンソーシアム。昨年は小型モジュール炉(SMR)など次世代原子炉の効率的な製造にともなう技術的課題への取り組みとして、非営利組織の運営の下で「先進的原子力製造センター」を開設するよう提唱した。NICは今回、ペリー長官宛てに書簡を送っており、その中で同長官が就任早々の昨年3月にユッカマウンテンを視察したことや、トランプ政権が同年5月の2018会計年度予算教書で、深地層処分場建設認可申請審査の再開に9,040万ドル、使用済燃料の中間貯蔵施設の開発開始に660万ドル、およびこれらの管理運営費の合計で1億2,000万ドルを要求したことを高く評価した。
 しかしながら、DOEによるその後のアプローチは、旧態依然とした現状維持的なものに逆戻りしてしまったとNICは指摘。その最たる例として、DOEの新たな管理組織体制から「民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)」が除外された点を挙げている。OCRWMは「1982年放射性廃棄物政策法(NWPA)」に基づき、深地層処分場計画の実施主体として設置された部局。2010年にB.オバマ政権が同計画の打ち切りを決定したのにともない同年度末に廃止されており、関係する責任と機能は原子力局(NE)に委ねられていた。

 NICによると、DOEでは民間放射性廃棄物管理プログラムの再設定が順調に進展しておらず、それに対する懸念が増大しつつある。そのため、DOEが取るべき行動オプションとして、OCRWMを法令に基づいて再設置し、局長を指名。約1,000万ドルの繰越資金を使って、ユッカマウンテン計画建設認可申請審査の再開準備を行うことを提案した。
 NICはまた、商業用と軍事用合わせて約8万6,000トンの放射性廃棄物が全米39州の121サイトに留め置かれている現状に触れ、これらに対する納税者の負担も300億ドルに達しようとしていると説明。国の放射性廃棄物管理プログラムが正しく機能することは、既存の、そして将来の原子力発電所にとって重要であるだけでなく、軍事用廃棄物を抱えるコミュニティや国家安全保障にとっても重要との認識を表明している。

 OCRWM廃止後の2013年1月、NEは政府の有識者(ブルーリボン)委員会勧告に従って、受け入れ自治体の同意に基づくサイト選定方針等を盛り込んだ放射性廃棄物管理処分戦略を公表。2021年までに中間貯蔵・パイロット施設の操業開始を実現、2025年までに規模の大きい中間貯蔵施設の操業を開始、2048年までに最終処分場の操業開始、などの計画を明らかにした。2017年1月には、地元の同意に基づくサイト選定プロセスの案文を公開協議に付している。