米コネチカット州の規制当局、条件付きでミルストン発電所の財政支援を勧告
米コネチカット州のエネルギー環境防護省(DEEP)と公共事業規制局(PURA)は2月1日、州内で稼働するミルストン原子力発電所(90万kW級と120万kW級のPWR)に対し、財政的な支援措置を条件付きで実施すべきだとの見解を明らかにした。これは、CO2排出量の削減目標達成などの点で、同発電所がコネチカット州および同州が属するニューイングランド地方全体にとっても重要との評価結果に基づいている。
同州では昨年10月、この支援措置を盛り込んだ「ゼロ炭素電力の調達に関する法案(SB1501号)」が成立したが、この段階で発電所の所有者であるドミニオン社は、同発電所がこの支援を必要としていることを裏付ける詳細な財務文書を提出していなかった。DEEPとPURAも、専門のコンサルティング企業に委託して、入手可能な情報のみの分析により同発電所の現時点と将来的な経済性評価を実施中だったが、今回、その最終的な結果とそれに対するDEEPらの決定事項を報告書としてとりまとめたもの。
この中でDEEPらは、「複数のシナリオにおいて、同発電所では2035年までは収益が見込める」との認識を示す一方、「主要コストが2~3変動しただけでこの結果に大きな影響が出るほか、ドミニオン社が監査済みの財務文書を提出して、同発電所が早期閉鎖のリスクに陥っていると実証する可能性もある」と指摘。コネチカット州にとって重要な無炭素電源であるミルストン原子力発電所に対し、現状で直ちに実行可能な支援メカニズムがほかに存在しない以上、「ゼロ炭素電力の調達に関する法令」に基づく支援計画を進めるべきだと結論づけた。ただしその際は、支援を受ける資格のない電源について納税者が市場価格を上回る支払いを強いられることがないよう、一定の条件を付けることを提言している。
コネチカット州はニューイングランド地方の独立系統運用者(ISO-NE)の管轄エリア内にあり、同ISOが運営する容量市場で卸電力の取引が行われている。ドミニオン社の主張によると、このように自由化された市場環境下では、イリノイ州やニューヨーク州の原子力発電施設と同じく、ミルストン発電所にもCO2を出さないなどの利点に見合った恩恵がもたらされるシステムが必要になる。「ゼロ炭素電力の調達に関する法令」では、同発電所が支援を受ける資格ありと認められた場合、年間120億kWhを超えない発電量について、3年以上10年未満の長期電力供給契約を締結することが可能になると規定。同発電所で長期的に安定した収益が見込めることになる。
これまでのところドミニオン社は、同発電所の経済性について2頁ものの短期の財務予測を昨年11月に州政府に提出したほか、信憑性を確認できない将来的な財務予測を今年1月に提出したのみだった。このため、DEEPらは最終決定をまとめるのに際し、暫定報告書の公表後に関係者から得られたコメントを斟酌。また、送電網の信頼性と回復力の維持に資する原子力施設を支援するため、米エネルギー省(DOE)が昨年、コストを全面的に回収する規則の制定を提案したのに対し、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が今年1月に制定手続を打ち切ったことも考慮したという。
これらに基づく感応度分析を複数回にわたって実施したところ、同発電所の採算性はドミニオン社その他が取り上げたコスト評価と相関関係にあり、そのいくつかを調整した場合、発電所の運転継続はリスクにさらされる可能性があるとした。どの評価が最も正確であるか確認出来ないため、監査を受けた詳細な財務データが必要だとDEEPらは報告書の中で述べている。
一方、地元の発電容量やCO2排出量の抑制面については、DEEPらはミルストン発電所の有用性を明確に認めている。同発電所を閉鎖したと仮定すると、電源の多様性やエネルギー供給保証、および送電網の信頼性確保という点で、地元ニューイングランド地方に重大な悪影響が及ぶとDEEPらは明言。州内では新たな発電容量を必要とする事態にはならないものの、同地方全体では不足が生じ、ISO-NEが天然ガス火力でこれをカバーする可能性が高いとした。また、ISO-NEが最近公表した調査結果によると、今後、冬季に同発電所が利用できなければ、同地方では輪番停電を強いられる可能性があるとしていた点を指摘した。
さらに同発電所の閉鎖によって、同地方全体の発電部門が排出するCO2は8,000万トン増加するとDEEPらは予測している。同発電所で稼働する2基分の容量220万kWのうち、少なくとも25%を大型水力などで代替した場合、電力需要の削減やエネルギー貯蔵といった措置も必要となり、州内の納税者が負担するコストは18億ドルに到達。容量の100%を代替すれば、このコストは55億ドルに増大するとの予測を明らかにしている。