米国で発電税控除期限の延長含む超党派法案 成立
米国のD.トランプ大統領は2月9日、新設原子力発電所に対する発電税控除の適用期限延長を含めた「2018年超党派予算法(H.R.1892号)」に署名した。同法案の主旨は、連邦政府予算の失効により一部閉鎖状態にある政府機関に短期的な予算措置を施すことだったが、発電税控除の延長が盛り込まれたことで、国内30年ぶりの新設プロジェクトとして建設されているA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機(各PWR、110万kW)を完成に導く重要な条件が1つ、クリアになったと産業界では歓迎している。
発電税控除(PTC)は2005年エネルギー政策法に基づく原子力支援策で、当時、エネルギー供給拡大の柱と位置付けられた原子力発電所の新設を促すために、建設コストに対する連邦政府の融資保証制度や規制リスク保険プログラムなどとともに打ち出された。2021年1月1日までに運転を開始した最大600万kW分の新型原子力発電施設について、1.8セント/kWhを8年間にわたって発電税から控除するという内容だが、ボーグル増設計画の現在の日程では、3号機と4号機の完成はそれぞれ2021年11月と2022年11月。このため、同計画を受注したウェスチングハウス(WH)社の倒産申請後、オーナー企業らは完成までに必要な追加経費の評価において、PTCの期限延長と追加の融資保証を連邦政府から受けられる可能性や、東芝によるWH社の親会社保証金の支払いなどを考慮していた。
同計画ではすでに2010年2月、米エネルギー省(DOE)が総額83億3,000万ドルの融資保証適用を承認していたが、2017年9月にDOEは追加で最大37億ドルを融資保証すると提案した。東芝も同年12月中旬、分割払いを予定していた親会社保証金の残額32億2,500万ドルを一括で弁済。オーナー企業らから増設計画の継続提案を受けていたジョージア州公益企業委員会は、同月下旬に計画の継続を全会一致で承認した。
今回成立した2018年超党派予算法によると、エネルギー政策法の関係条項に新たな文言が追加され、2020年12月末以降に運転開始する新設原子力発電所に対しても発電税控除が適用される。また、原子力発電所の新設計画に参加する地方自治体の公益事業体は、相応の補償と引き替えにそれぞれの控除枠をパートナー企業に移転することができると明記。ボーグル計画ではサザン社傘下のジョージア・パワー社が45.7%を出資する一方、残りは地元のオーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)、およびダルトン市営電力がそれぞれ30%と22.7%と1.6%を出資している。
同法案の成立を受けてジョージア・パワー社は、関係した議員や議会委員会の努力を称賛。PTCの適用により、増設計画の継続リスクが一層軽減されただけでなく、運転開始後に損益分岐点が低下すれば同社の顧客は約10億ドル相当の恩恵を受けることになると述べた。また、同社分の追加融資保証枠として、16億7,000万ドルをDOEから条件付きで得る可能性があると説明。最終承認までにはさらなる交渉や規制上の承認も必要だが、顧客には一層の利益をもたらせるかもしれないと強調した。
米原子力エネルギー協会(NEI)も同日、法案成立についてコメントを発表しており、上下両院における超党派の票決が新設原子炉への発電税控除適用を可能にしたと指摘。今後も原子力発電分野で米国がリーダーシップを維持したり、環境の保全や雇用の創出に役立てることができるとした。また、PTCはジョージア州で2基のWH社製AP1000を完成させる重要要素であるのみならず、ニュースケール社がアイダホ州で計画している先進的小型モジュール炉(SMR)の建設にも道を拓くとの認識を表明している。