ロシア:最新設計を採用したクルスクII期工事の機器製造開始

2018年2月21日

©ロスエネルゴアトム社

 ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は2月19日、同国最新の第3世代+(プラス)設計「VVER-TOI」を初めて採用したクルスク原子力発電所II期工事1号機の建設計画で、同社のエンジニアリング部門であるAEMテクノロジー社が機器製造を開始したと発表した。
 「VVER-TOI」は、120万kW級ロシア型PWR(VVER)の最新シリーズだった「AES-2006」をベースに、技術や経済性のパラメーターで最適化を図った設計。連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)が昨年6月にII-1号機の建設許可を発給したことから、AEMテクノロジー社は今回、蒸気発生器の製造や主要な循環管路関係の作業を開始した。サイトでは同年12月末から、原子炉建屋底部の基礎版で鉄筋を設置する作業が進められており、この作業が完了次第、今年前半にも最初のコンクリート打設を実施するとしている(=写真)。

 ロスアトム社によると、「VVER-TOI」では「AES-2006」と同様、運転期間が60年に設定されているのに加え、重要な安全機能については全面的に受動的システムを採用。二重構造の格納容器、2次系を介した緊急時の熱除去といった特長も同じである。一方、全電源喪失時に運転員の介在なしで炉心溶融の回避が可能な時間は、「AES-2006」の24時間から72時間に拡大されたほか、本格着工から機器の設置完了までの期間を11か月短縮することが可能だという。クルスクII-1号機は今後、ロシア内外で建設する「VVER-TOI」のレファレンス原子炉となるため、同社のA.リハチョフ総裁は、同炉と後続の2号機は高度かつ先進的な原子力技術となるだけでなく、同社にとっても重要な価値を持つものだと説明している。

 クルスク原子力発電所では現在、チェルノブイリ発電所と同じ軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)が4基(各100万kW)稼働中。これらのリプレースという位置付けになるII期工事では、最終的に125.5万kWの「VVER-TOI」を4基建設することが計画されている。このため、I期工事1、2号機の閉鎖時期に合わせて、II期工事1、2号機を2021年以降、順次完成させていく計画である。「VVER-TOI」設計は同発電所以降の建設計画にも採用が決定しており、具体的にはニジェゴロド1、2号機やセベルスク1、2号機、スモレンスクII期工事1~4号機などの名が挙がっている。
 

(ロスアトム社等の資料を元に作成)