WH社とニュースケール社のSMR設計でカナダの許認可申請前審査
カナダ原子力安全委員会(CNSC)は2月19日、米国籍のニュースケール社とウェスチングハウス(WH)社がそれぞれ開発中の小型モジュール炉(SMR)設計について、許認可申請前設計審査を実施することになったと発表した。建設・運転許可などの申請手続に先立ち、設計がカナダの規制要件を満たしているか、メーカー側の要請に基づいてCNSCが評価サービスを提供しているもので、法的に有効な設計認証や関係認可が得られるわけではない。しかし、ニュースケール社は2016年末、SMR設計としては米国初となる設計認証(DC)審査を米原子力規制委員会(NRC)に申請済みであり、WH社も熱パイプを利用する極小原子炉設計「eVinci」で2024年までに商業炉を建設することが目標。同審査をカナダでの正式な許認可申請に向けた第一歩として活用する考えと見られている。
CNSCの審査は3つのフェーズで構成されており、それぞれ(1)カナダの最新規制要件に対する全体的な適合性を評価、(2)詳細評価により許認可申請手続に際して根本的障害となり得るものを特定、(3)第1、第2フェーズで指摘された特定項目をフォローアップ--が目的である。これまでに、カナダのSNCラバリン社が第3世代の加圧重水炉設計「EC6」について同審査を完了したほか、同国のテレストリアル・エナジー社は2017年に「一体型溶融塩炉(IMSR)」で第1フェーズの審査を終え、第2フェーズを準備中。また、三菱重工と仏アレバ社(当時)の合弁事業体であるATMEA社は、第3世代+(プラス)設計の「ATMEA1」について第1フェーズの審査を受け、妥当な安全設計であるとの評価結果を2013年に受領した。ニュースケール社とWH社の場合は、第1、第2フェーズを組み合わせた形の審査を受けることになる。
ニュースケール社のSMRは電気出力5万kWのモジュール統合型PWRで、モジュールを12基連結することで出力を最大60万kWまで拡大できる。また、固有の安全性により、異常な状況下で原子炉を自動停止し、人的介入や追加の注水、外部からの電力供給なしで無期限に冷却することが可能だという。同社は現在、CNSCとサービス協定の協議を実施中で、今年半ば頃から審査が開始される見通しである。
WH社の説明資料によると「eVinci」は遠隔地や北極圏の鉱山における熱電併給を目的としており、10年以上燃料交換なしで運転することが可能である。炉外復水器となる部分の周囲にチューブを環状にわたして主要熱交換器とする設計で、電気出力は最大2.5万kW。既存の商業炉と異なり、冷却材や所内電力の喪失事故、制御棒の抜けなどにより炉心に正の反応度が加えられることを回避できる。審査の日程については現在協議中であり、後日に決定するとしている。