カナダ政府、SMR開発で戦略ロードマップに着手
カナダ天然資源省は2月22日、次世代原子炉技術である小型モジュール炉(SMR)をカナダ国内で開発利用するのみならず、将来的には世界のSMR市場でリーダー的立場を獲得することを目標に、戦略ロードマップの作成を開始すると発表した。
送電網につながずに利用する場合も含めてSMRの適用可能性を探り、開発と建設にともなう優先事項や課題について、関心を持つ州政府や準州政府、エネルギー事業者といった関係者の理解を深めるのが目的。同省のエネルギー革新技術プログラムの下、カナダ原子力協会が中心となって作業を進め、今年の秋にはロードマップを完成させる計画だ。
天然資源省の発表によると、過去60年以上にわたってカナダの原子力開発利用を支えてきた原子力産業は、技術革新や雇用創出、低炭素エネルギーの重要な供給源。次世代の原子炉技術は、カナダ国民が低炭素経済におけるエネルギー需要を満たしつつ、一層クリーンかつ安全な社会を構築する一助になるとした。
同省はまた、カナダが将来的に低炭素な経済・社会に移行するにあたり、温室効果ガスの排出抑制目標をどのように達成し、エネルギーの適正価格を維持していきたいか、全国各地のカナダ国民38万人以上を対象とする対話を昨年4月から実施していた事実にも言及した。結果として、SMRのような新技術に関する重要判断を下す際、指針となるようなカナダ全体のアプローチを国民が原子力について望んでいることが判明したと指摘。カナダが今後も低炭素経済に向けて、クリーン・エネルギー開発や技術革新、エネルギー供給保証を推進していく方針であることを明らかにした。
ロードマップの作成においては、最終的に重要パートナーすべての参加を可能にする計画で、製造業者や研究者、放射性廃棄物管理事業者のほかに、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が加わるとした。それぞれのこれまでの知見に基づいたロードマップにより、技術改革を促進し、産業界の長期的ビジョンを構築。様々なSMR技術の特性のみならず、カナダ独自の優先事項やユーザー要件に対する適合性も評価するとしている。
カナダではカナダ原子力研究所(CNL)が昨年4月、今後10年間の「長期戦略」の中で、2026年までにオンタリオ州にあるCNLのチョークリバー・サイトでSMRを建設するとの意欲的な目標を提示。同年8月には、カナダ国内のSMR開発と商業化にCNLが果たす役割について、70以上の企業・組織から関心表明があり、このうち15件以上がCNLサイト内におけるSMR原型炉、あるいは実証炉建設に関するものであったことを明らかにした。
また、CNSCは今月19日、米国のウェスチングハウス社とニュースケール社がそれぞれ開発中のSMR設計について、許認可申請前設計審査を実施することになったと発表した。法的に有効な設計認証や関係認可を発給するわけではないが、これらの設計がカナダの規制要件を満たしているか、メーカー側の正式な建設・運転許可申請に先立ち、評価を行うとしている。