米国の商業用BWRで事故耐性燃料集合体の試験体を初装荷

2018年3月8日

©サザン・ニュークリア社

 米サザン社傘下のサザン・ニュークリア社は3月6日、ジョージア州で計画停止中だったE.I.ハッチ原子力発電所(=写真)1号機(BWR、91.1万kW)で事故耐性燃料(ATF)集合体の試験体装荷を終え、4日付けで送電網に再接続したと発表した。
 この試験用集合体は、GE社と日立の合弁企業であるグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社が米エネルギー省(DOE)の「事故耐性燃料開発プログラム」でBWR用に開発したもの。同社によれば、耐酸化性と耐摩耗性を向上させる画期的な技術により、設計外事故発生時における安全マージンが拡大するほか、コスト面で一層メリットのある運転が既存のBWRで可能になるという。今後、原子力発電所のさらなる安全性と信頼性の向上を目指して、様々な試験を実施すると見られている。

 福島第一原子力発電所事故後、米国では軽水炉燃料の事故耐性強化が大きな議論を巻き起こした。このため、議会は2012会計年度予算において、事故耐性が強化された燃料と被覆材の開発を開始する予算措置をDOE原子力局に対して決定。具体的な設計目標としては、極限の状況下における水素の発生量削減、核分裂生成物の保持、高温蒸気と被覆材の反応改善、などを特定した。2022年頃まで3段階で開発・実証戦略を進めることになり、(1)先進的な燃料と被覆材の概念について、経済性や安全性および環境に対する影響等の分析評価、実験室規模の試験などを含めた実行可能性評価と絞り込みを2016年度まで実施、(2)正式認可の取得が可能な新しい燃料の製造や大規模照射試験など、開発・認定段階の活動を2022年度まで実施、(3)それ以降は、燃料の商業化と産業界への技術移転を実施--という日程が組まれた。

 同プログラムには国立研究所や大学の専門家が参加しているほか、産業界からは、GE社、ウェスチングハウス社、仏アレバ社の3グループが協力。GE社傘下のGNF社は、ジョージア州でボーグル3、4号機増設計画のプロジェクト管理を担当しているサザン・ニュークリア社、イリノイ州でクリントン原子力発電所を所有・運転するエクセロン社と連携し、「IronClad」の名で知られるクロム・アルミニウム鉄合金の燃料被覆材、および標準型のジルコニウム被覆管に「ARMORコーティング」を施す技術をそれぞれ使用した試験集合体を、今後数年の間に複数の原子炉に装荷する計画である。今回、ハッチ発電所にこれら2種類の試験集合体を装荷したのに続き、クリントン原子力発電所(BWR、107.7万kW)への装荷は2019年に実施するとしている。