IAEA、緊急事態の解除時期特定等に資する安全指針 公表

2018年3月19日

 国際原子力機関(IAEA)は3月14日、原子力発電所や放射線関係の緊急事態に陥った後、政府当局がその体制をいつ、どのように解除して平常時の状態に移行すべきか判断する取り決めのガイダンスと勧告を盛り込んだ一般安全指針(No.GSG-11)を公表した。
 福島第一原子力発電所事故やチェルノブイリ事故など、世界で発生した事故や事象をケース・スタディとして取り上げ、それらの経験から放射線防護に係わる教訓や良慣行を設定。緊急事態後の対応で科学的根拠に基づいた判断を下せるよう支援することを目指している、今後数か月以内に、同指針の訓練教材を発行する予定だとしている。

 発表によると今回の安全指針は、IAEAが設定した安全要件における7つの共通事項(GSR)のうち、パート7「原子力または放射線緊急事態への対応と準備」、およびパート3「放射線防護と放射線源の安全」を満たす上で、推奨事項や手引きとなるものを示している。IAEA理事会は2015年3月にGSRパート7を承認したが、世界的な緊急時対応と準備について開催された同年10月の国際会議では、緊急事態の解除と復旧への移行に対するガイダンスの「欠如」が重要課題として認識されることになった。
 同国際会議はまた、IAEAが関連ガイダンスの策定作業を継続することも勧告。これを受けてIAEAは、緊急事態後に通常の社会・経済活動をタイムリーに再開できるよう促すことを目的に、地元生産物の消費制限や避難指示も含め、緊急時対応として取った防護措置の解除をどのように決定するかなど、項目別のガイダンスを今回の安全指針で提示。そうした決定を全体的な緊急時計画の一部とする取り決めの策定において、各国の政府当局に支援を提供できると説明した。

 同安全指針は、IAEAのほかに食糧農業機関(FAO)や国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)、国際民間航空機関(ICAO)など9つの国際機関が協賛しており、IAEAは昨年12月に試験的ワークショップを含む訓練活動をウィーンで実施した。同ワークショップで講師を務めたアイルランド環境防護庁のプログラム・マネージャーは、「今回の指針により、各国の緊急時計画と対応の枠組で今まで取り上げられなかった課題がカバーされることになった」と指摘。緊急時から「新たな平常時」に移行する際、影響を受けた人々に安全と安心な生活を提供するための放射線防護条件やその他のファクターを意思決定者が特定し、緊急時体制の終了を正式に宣言する上で一役買うことになると強調した。ただし、IAEAは「新たな平常時」の説明について、必ずしも緊急時前と同一の状態を意味しない点を言い添えている。