インドネシア、試験用小型高温ガス炉の詳細設計 開始

2018年3月20日

 インドネシアで原子力発電導入計画を担当する原子力庁(BATAN)はこのほど、商業用小型高温ガス炉(HTR)の導入に向けて、熱出力1万kWの試験・実証炉(RDE)の詳細工学設計(DED)を開始したと発表した。
 熱電併給可能な小型HTRの開発は、100万kW級の大型炉を導入する前段階として同国が2014年から進めているもので、BATANは昨年、RDEの基本工学設計(BED)を完了。開発計画は新たなフェーズに移行し、今年9月初旬までにDEDを完成させる方針を明らかにした。同計画では、日本原子力研究開発機構が2014年8月から国産技術の国際展開と国際標準化の一環として協力しているほか、中国でHTR建設計画に携わっている中国核工業建設集団公司(CNEC)も2016年8月、中国製HTRの将来的な海外プロモーションを目的に、BATANと協力協定を調印している。

 電力需給の逼迫等を理由に、インドネシアは1980年代に原子力発電の導入検討を開始。建設予定地における火山噴火や地震の可能性、福島第一原子力発電所事故などが影響し、大型炉の導入計画で目立った動きが見られない一方、中小型炉に対する関心は初期投資の縮減や電力網への影響軽減の観点から維持している。2014年にBATANが公表した原子力展望によると、2027年以降にジャワ島、マドゥラ島、バリ島をカバーする100万kW級原子炉2基の開発、2031年以降はスマトラ島でさらに2基、およびカリマンタン島、スラウェシ島、その他の離島においては、10万kW級小型HTRを産業利用目的に導入することが明記されていた。

 2015年3月にBATANは、2014年からゆるやかなペースでRDE開発に乗り出したことを明らかにしており、その際、「原子力発電所の開発準備には非常に時間がかかるため、優先的な開発項目となるのは2019年以降になる」との認識を提示。RDEを開発する目的としては、(1)小型の原子炉建設を通じて、原子力発電所を開発・運転・維持するための技術を習得する、(2)原子力発電が安全かつ経済的で環境にも優しい電源であることをすべてのステークホルダーに実証する――を列挙した。2015年時点ですでに、RDEの開発準備チームが2019年の運転開始を目指して様々な準備活動を開始。それには、建設候補地の実行可能性に関する技術評価や、許認可手続に必要な技術文書の作成、候補地等における住民への説明が含まれるとした。

 BATANの今回の発表によると、2015年にはRDEのプレ開発プロジェクトが進展し、BEDの基礎となる概念設計と安全解析文書を作成。これには、ロシアが2009年に買収した独ニューケム・テクノロジーズ社とインドネシアの2社による企業連合がコンサルタントとして協力した。また、BATANは2017年、ジャカルタの西20kmに位置するバンテン州南タンゲラン市を、建設サイトとするための許可を原子力規制庁(BAPETEN)から取得。今後は、安全解析文書と完成したDEDを使って、RDE設計に対する承認の取得を目指すとしている。
 2018年に実施する作業としては、複数の大学と民間企業のコンソーシアムと協力してDEDの作成を進め、6月にDED案を国際原子力機関(IAEA)の専門家による審査にかける計画。IAEAの審査結果と勧告に基づいてこれを改良し、9月初旬のIAEA総会に参加する国際コミュニティに同設計を発表する方針であることを明らかにした。