UAEで初号機の竣工式、供給国韓国と協力関係強化へ
アラブ首長国連邦(UAE)の国営首長国通信(WAM)によると、同連邦初の商業炉として建設中のバラカ原子力発電所で1号機(PWR、140万kW)が完成したことから、3月26日に現地で竣工式が行われた。
原子力導入プログラムを担当する首長国原子力会社(ENEC)と主契約者の韓国電力公社(KEPCO)は、2012年夏の本格着工以来、原子力産業インフラがまったく存在しないUAEで、最も高い安全・品質管理基準を遵守しつつ同炉が69か月で完成した点を高く評価。建設段階を正式にクリアしたことから、今後は2015年に申請した運転許可を連邦原子力規制庁(FANR)から取得するため、安全な運転開始に向けた準備を集中的に進めていくとしている。
竣工式には、同発電所が立地するアブダビ首長国のムハンマド皇太子兼UAE軍副最高司令官、およびUAEを訪問中だった韓国の文在寅大統領が出席。このほか、UAEの外務・国務協力大臣を含む関係閣僚や主だった関係地域の首長、建設に尽力した韓国側専門家などが参列した。ムハンマド皇太子は1号機の完成について、「我が連邦の発展における歴史的瞬間だ」と述べ、UAEが進める原子力の平和利用プログラムは、同連邦が成長していく上で戦略的役割を果たすと指摘。エネルギー供給保証の強化や経済の多様化、雇用機会の創出に寄与することで、後継世代に将来を保証する一助になると強調した。
バラカ1号機ではすでに、冷態機能試験や温態機能試験を含めた様々なシステム試験が完了しているが、これらは初期試験プログラム(ITP)における第1段階の一部。ITPと並行して、ENECとKEPCO、および両社が共同出資する運転・保守(O&M)担当企業のNAWAHエナジー社は、運転開始準備のための包括的プログラムとして、O&M担当所員に高水準の能力を身に付けさせる訓練を実施中である。
同発電所で、所員や所定の手続き・プログラムといった準備がすべて完了し次第、NAWAH社は1号機で燃料の装荷と起動を開始するための承認をFANRから取得する計画。FANR側では運転認可の発給前に、発電所と運転組織のあらゆる側面について詳細な点検・審査を実施する。
また、FANRによる広範な審査プロセスに加えて、国際原子力機関(IAEA)と世界原子力発電事業者協会(WANO)所属の国際的な専門家が、独自の立場から1号機とその運転組織を評価中。原子炉の物理的インフラのみならず、運転チームと管理スタッフの能力と専門的知見についても、包括的な審査が行われることになる。
バラカ発電所では現在、1~4号機まで4基(各140万kWの「改良型PWR1400」)の建設作業を同時に進めているため、ENECは今後も2~4号機の建設管理を継続する。これら3基の工事進捗率はそれぞれ、92%、81%、および66%に達しており、発電所全体では86%の工事が完了した。4基すべてが送電開始した場合、UAEでは総電力需要の25%が賄われる見通し。原子力は今後数十年にわたって、クリーンで効率的かつ信頼性の高い電力を供給していくとしている。
なお、ムハンマド皇太子と文大統領は竣工式の前日、両国の戦略的連携関係を「特別な」戦略的連携関係に昇格させることで合意した(=写真)。1980年に外交関係を樹立した両国は、2009年末にKEPCO率いる韓国企業連合がバラカ発電所建設計画を受注して以降、経済・産業面の様々な分野で積極的に協力。既存の原子力と国防分野の協力に加えて、科学やIT、再生可能エネルギー開発を含めた全面的な分野に交流と協力を拡大していくとした。原子力発電に関して両首脳は、2国間の協力を象徴するもので何よりも重要との共通認識を確認。文大統領は、「韓国が米国から原子力発電所を導入して独自の技術を開発・輸出するまでになったように、UAEにも同じ道を歩けるよう支援したい」と述べた。国防と防衛産業については、単なる技術移転に留まらず第3国に進出する方法でも協力していくとの抱負を明らかにしている。