米事業者、財政事情により原子炉4基を2021年までに閉鎖へ

2018年3月29日

デービスベッセ発電所では2037年4月まで合計60年の運転が許可されている。©FES社

 米国のファーストエナジー・ソリューションズ(FES)社は3月28日、財政的な事情によりオハイオ州とペンシルベニア州で運転する3サイト・4基の商業用原子炉を、2021年までにすべて閉鎖すると発表した。
 同社の顧客エリアでは、北米最大の地域送電機関(RTO)であるPJMが電力システムと卸電力市場を運営しており、このような自由化市場の容量オークションで十分な結果が得られないことや電力価格の低迷、電力需要の将来的な伸び悩みを理由として示唆。その一方で、閉鎖予定日までの運転期間中は、対象の原子炉を法的に救済する道を追求していくとともに、売却という選択肢も模索するとしている。

 具体的な閉鎖計画としてFES社は、2020年にオハイオ州のデービスベッセ原子力発電所(ネット出力90.8万kWのPWR)、同じ州内のペリー原子力発電所(ネット出力126.8万kWのBWR)とペンシルベニア州のビーバーバレー原子力発電所(ネット出力約94万kWのPWR×2基)については、2021年の閉鎖を予定しているとした。これらの合計容量は約405万kWで、2017年の合計発電量はFES社による総発電量の約65%を占めた。また、地元コミュニティに対しては、これまでに税制面で5億4,000億ドル以上の貢献を果たしてきたとしている。
 今回の決定については、「非常に難しい判断だった」とFES社は説明しており、合計2,300名の原子力発電所従業員や、地元コミュニティのリーダー、労組が原因になったわけではない点を強調。各発電所では果敢なコスト削減に取り組んできたが、直面する市場問題は自らの力では制御不能であるとの認識を示している。
 その上で同社は、これらの発電所が従業員や地元経済にとっていかに重要であるか、また、担っている「無炭素で信頼性の高い電力の供給」という特別な役割を認めさせるような政策的解決策の設置を、両州の選出議員に働きかけていく考えを提示。対象原子力発電所で将来においても運転継続する方法を見つけるために、州内の政策立案者達と積極的に協力する準備はできていると強調した。

 実際にこれらの原子力発電所を閉鎖することになれば、詳細な廃止措置計画の作成や、運転認可の修正にともなう原子力規制委員会(NRC)との共同作業など、複雑な準備作業に約2年を要するという。また、これらの閉鎖が卸電力市場の信頼性に影響を及ぼす場合は、PJMの承認も必要になる。このためFES社は、対象原子炉の閉鎖計画を同日付でPJMに伝えるとともに、NRCにも口頭で通達。NRCに対してはその後30日以内に文書でも連絡する必要があると述べた。また、産業界の支援機関である原子力発電運転協会(INPO)と原子力エネルギー協会(NEI)にも、同様の通達を行ったことを明らかにしている。