米X-エナジー社の小型HTR用燃料製造にセントラス社が協力

2018年3月30日

 米国のウラン濃縮企業であるセントラス・エナジー社(旧USEC)は3月28日、X-エナジー社が計画している新型原子炉用燃料製造工場の建設に協力するため、設計支援サービス契約を同社と締結したと発表した。

 革新的原子力エンジニアリング企業であるX-エナジー社は現在、小型のペブルベッド高温ガス炉「Xe-100」(熱出力20万kW、電気出力7.5万kW)を開発中で、昨年3月には概念設計に着手した。同設計に使用される3重被覆層・燃料粒子「TRISO」の製造加工については、同年9月に両社間で協力覚書が交わされ、これに基づく今回の契約により、セントラス社は技術的な知見とテネシー州オークリッジにある技術製造センターを燃料製造加工工場の設計支援活動用に提供する。X-エナジー社は「2025年までのTRISO-X燃料製造加工工場の操業開始」を目標としているため、その実現を目指して様々な支援を行っていくことになる。
 現地の報道によると、この契約期限は2021年6月末となっており、X-エナジー社は同年中に燃料製造加工工場の建設・運転許可申請を計画している模様。「Xe-100」の設計認証(DC)審査についても、2021年後半の申請書提出を目指していると伝えられている。

 X-エナジー社の説明では、「Xe-100」は工期が短く、組み立て作業も工場内で可能なモジュール式の高温ガス炉(HTR)。物理的にメルトダウン発生の恐れがない設計で、冷却材喪失時も運転員の介入なしで安全性が保たれるという。ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆するTRISO燃料の技術は米エネルギー省(DOE)が開発したもので、DOEは2016年1月、官民折半による新型原子炉概念の開発支援対象の1つに「Xe-100」を選定した。これに基づき、5年間で5,300万ドルが原子炉設計と燃料の開発および初期の許認可活動に対して交付される一方、X-エナジー社は民間からも3,400万ドルを確保。TRISO燃料については今年中にも、試験的な製造を開始するとしている。

 今回の契約で、セントラス社は具体的に、燃料製造加工工場における機器のレイアウトとインフラ設備の設計、燃料輸送パッケージの概念開発、臨界安全分析などに関するサービスを提供する。これまでに公表していた両社間の協力項目である、コスト面で有利な燃料設計、高度に自動化した燃料製造ライン、将来的な商業用燃料製造施設の開発資金調達もカバーされることになる。また、このような活動の実施で共同会社を設立する可能性もあるため、両社は今回新たに、この共同会社における双方の負担の特定を目的とした了解覚書にも調印した。
 両社の認識では、TRISO燃料は「Xe-100」だけでなく、世界中で開発されている他の新型原子炉についても要件も満たすことができる。このため、X-エナジー社のH.バウワーズ社長は「濃縮度5~20%の高品質なウラン・ベース燃料で米国独自の生産能力を確立することは、今や急務になっている」と指摘。その上で、新型原子炉設計の開発企業は2020年代の半ばから後半までに初号機の建設を実現するために、今後6年以内に信頼できる燃料源を確保しなければならないと述べた。
 セントラス社のD.ポネマン社長兼CEOも、「X-エナジー社との協力を通じて、米国独自の新型原子炉用燃料源を開発する基盤が築かれる」との見解を示した。セントラス社の優秀な労働力や特殊な機器・施設を活用することで、X-エナジー社も急速に成長しつつある新型原子炉市場において、競争力を強化することができると強調した。

 なお、「Xe-100」は発電のみならず地域熱供給や脱塩にも利用可能であるため、ヨルダンが同国での建設に関心を表明。同国の原子力委員会とX-エナジー社は昨年11月、この可能性を検討するための了解覚書を締結している。