米印が科学技術協力をニュートリノ・プロジェクトに拡大
米エネルギー省(DOE)とインド原子力省(DAE)は4月16日、ニュートリノ物理に関して双方の機関が実施していた研究開発を、様々な共同プロジェクトとして進めていくための枠組協定を締結した。両国はすでに2015年1月、大強度超伝導陽子線形加速器の研究開発に関する共同プロジェクトで協力協定に調印していたが、今回はこの協力をさらに拡大。DOEのフェルミ国立研究所が主導する国際プロジェクト「長基線ニュートリノ装置(LBNF)を使った地下深部ニュートリノ実験(DUNE)」について、インドのニュートリノ観測施設(INO)が異なる技術によるニュートリノ検出器の開発で協力することになる。
LBNF/DUNEプロジェクトは、素粒子の一種であるニュートリノの性質研究を目的としており、日本を含む30か国以上の170機関から1,000人以上の科学者や研究者が参加。日本の小柴昌俊教授と梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞した際に使用した「スーパーカミオカンデ」と類似の装置を用いて、ニュートリノの大がかりな観測実験を行うという。具体的には、イリノイ州にあるフェルミ研の加速器でニュートリノを地下マントル内に発射し、800マイル(約1,300km)離れたサウスダコタ州サンフォード地下研究所に設置予定の大型液体アルゴン検出器で検出する計画。昨年7月には、2026年の実験開始を目指して、LBNF/DUNEの起工式が開催された。
フェルミ研によると、この次世代検出器では70,000トンの液体アルゴンと先進技術を使用することになっており、かつてないほどの正確さでニュートリノの基本相互作用を記録することが可能。これより小型のプロトタイプ検出器も、パートナーの1つである欧州原子核研究機構(CERN)がすでに建設中であるとした。一方、インドのINOでは、宇宙線が地球の大気と衝突して発生するニュートリノや反ニュートリノの情報を、鉄熱量計の技術を使って記録。この検出器技術により、ニュートリノと反ニュートリノが発する信号を区別する実験が可能になるとしている。
今回の協定には、DOEのR.ペリー長官とDAEのS.バス大臣が署名した(=写真)。ペリー長官は、「多くの国際パートナーと進めているLBNF/DUNEプロジェクトは、科学技術における米国のリーダーシップや、DOEおよびトランプ政権にとっても最優先の重要事項だ」と指摘。有望な研究分野であるニュートリノ科学でインドとの連携を拡大し、様々な発見につなげたいとの抱負を表明した。
DAEのバス大臣も、基礎科学分野の発見ではインドも豊富な実績を残してきたと強調。加速器科学に関する米国との協力をニュートリノ科学に拡大できることは非常に喜ばしく、科学に国境がないことや、知識の探求こそがまさしく人間の在り方であることを如実に示していると述べた。