カナダ原研、SMR実証炉の建設提案を募集

2018年4月19日

 カナダ原子力研究所(CNL)は4月17日、親会社であるカナダ原子力公社(AECL)の敷地内で小型モジュール炉(SMR)の実証炉を建設・運転するプロジェクトの提案を募集すると発表した。
 2026年までに実証炉建設をカナダで成功させるという長期戦略に基づいて、世界中のベンダーから広く提案を募り、CNLが設定した審査プロセスの適用を開始する。提案されたSMR設計の技術面、事業面の利点や、プロジェクトとしての資金調達可能性を評価するとともに、国家安全保障や健全性に関わる要件についても審査を行う。募集期間は年に2回設ける方針で、今回は5月28日までに受領した提案申請を初回分として評価する。

 CNLの認識では、世界は原子力も含めて、信頼性のあるエネルギー源の活用チャンスをさらに必要としており、安全でクリーンなエネルギー供給面におけるSMRの可能性は過去10年間で徐々に認められるようになってきた。SMRには数多くの利点があり、具体的に従来の大型炉と比べてサイズと出力が小さく、モジュール式に購入・建設が可能。先行投資額も少なくて済み、プラントとしての作りがシンプルで運転員数を削減出来ることなどをCNLは挙げた。
 SMRはまた、従来型原子炉の特長も維持しており、それは温室効果ガスを出さずに安全で信頼性の高いエネルギー供給ができることや、柔軟性のある運転が可能なことだとした。さらに、SMRは発電のみならず、幅広いエネルギー供給システムの一環として地域熱供給やエネルギー貯蔵、脱塩、水素製造にも適用できるとCNLは指摘。これらを総合すると、カナダでSMRを建設することは非常に魅力的なことであり、様々な経済的恩恵を地元コミュニティに提供するとともに、連邦政府の地球温暖化対策にも貢献するとの考えを示している。

 CNLはAECLの組織改革にともない、その研究所機能をすべて引き継いで2014年に設立された国立研究所。CNLが保有する規制関係の経験や法令遵守プログラム、十分な装備の研究所施設、原子力科学技術分野全般における知見は、SMRの概念設計から建設まで技術開発全体をサポートできる特別な体勢を形作ったとCNLは強調。SMRの商業的な実行可能性を実証し、プロトタイプ試験や技術開発支援における世界のリーダー的立場を目指したいとした。連邦政府もこの目標の達成に向け、SMR開発の戦略ロードマップ作成に乗り出したことを今年2月に公表している。
 CNLによる今回の提案募集は、カナダでのSMR開発と商業化でCNLが果たす役割について、昨年6月に産業界から関心表明を募集したのに続く措置。カナダでのSMR建設を成功させるため、最も重要な一歩が踏み出せたことを誇らしく思うとコメントした。

 建設・運転プロジェクトの提案審査でCNLが設定したプロセスは4段階で構成されており、まず「認定前段階」において提案を予備的基準で審査。次に「適正評価段階」で一層厳格な財務要件審査を行い、資金調達とプロジェクト経費について全面的な評価を行う。これに続く「土地の手配とその他契約に関する交渉段階」では、CNLが管理するサイトの所有者であるAECLとサイト譲渡契約を結んでもらい、最終的に「プロジェクトの実施段階」に進展。SMR実証炉の許認可と建設、試験、起動、運転、廃止措置が実行に移されるとしている。