建設中のオルキルオト3号機、今秋に燃料初装荷へ
フィンランドで2005年からオルキルオト原子力発電所3号機(PWR、172万kW)(OL3=写真)を建設中のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)は、今秋にも同炉で燃料の初装荷を開始できる見通しになったと今月号のニュースレターで明らかにした。同炉では世界で初めて、仏アレバ社(現フラマトム社)製・欧州加圧水型炉(EPR)を採用したことから、規制関係書類の認証作業や土木工事で想定外の時間を消費。このため、当初2009年に予定されていた運転開始は、最新のスケジュールで2019年5月に繰り延べられた。TVOは現在、送電網への接続を12月に計画しており、これに先立ち3月下旬に国際原子力機関(IAEA)の運転開始前安全評価チーム(Pre-OSART)を受け入れ、一層の強化が必要な部分について勧告を受けたとしている。
OL3建設工事の遅延にともなう超過コストと損害賠償については、TVOは3月中旬、工事を請け負った当時のアレバ社と独シーメンス社の企業連合と包括的な和解契約を締結。同連合から合計4億5,000万ユーロ(約598億円)の支払いを受けることになったほか、OL3の完成までに必要な人的、技術的資源も、フラマトム社から提供を受けるとした。TVOによると、OL3の起動を成功させるためにフラマトム社の専門家がすでに発電所に詰めているのに加え、同社の親会社となったフランス電力(EDF)からも追加の専門家が派遣される予定である。
現場では4か月前から温態機能試験が始まっており、燃料を装荷せずにプラント全体のレベルで初めて、原子炉やタービンの機能を確認中。一次系の温度と圧力を通常運転と同じレベルまで徐々に上昇させ、200以上の系統試験を実施する。これらを完了させた後、フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)がOL3の安全性を評価。政府が運転許可を発給してようやく、241体の燃料集合体の装荷作業が始まることになる。燃料の装荷後も一部の温態機能試験を改めて実施する必要があり、実際の起動まで綿密なプロセスを時間をかけて踏んでいく考えを表明している。
IAEAのPre-OSARTは、3月22日にOL3における18日間の評価作業を完了した。同チームの国際的な専門家11名は同炉における良好事例として、スタッフの技能と知識を改善する効果的なシステムが敷かれている、建設・起動段階の安全文化を評価する際に系統的な手法を導入している、などを特定。一方、改善を要する点としては、管理者側からスタッフに期待する事項を適切に設定して明確に伝えるべきだとしたほか、異物の混入を防ぐプログラムや防火対策を強化すべきだと勧告した。
なお、現在の温態機能試験段階ですでに若干の遅れが生じている。TVOは全体的な基本スケジュールについてサプライヤー側の報告を待っているところであり、最新の運転開始日程に影響が及ぶかは、まだ判断できないとしている。